かつきよ

AI崩壊のかつきよのレビュー・感想・評価

AI崩壊(2020年製作の映画)
3.2
シンギュラリティを扱った作品が鬼好きなので、今作の設定に引き込まれ鑑賞しました!

結果的にいえば、シンギュラリティ映画としては全く見応えがありませんので、シンギュラリティ好きな人は回れ右をお勧めします。そもそもシンギュラリティ映画ではないので、広告の煽り方が間違ってます。広告だけがミスリードで、映画本編にはシンギュラリティのミスリードすら存在しません。AIをテーマにしたかっただけの、既視感のあるサスペンスです。

今作の見所は大沢たかおです。大沢たかおが好きな人ならば、掛け値なしに見る価値があります!!大沢たかおが大沢たかお全開で活躍します。
わたしは大沢たかおは別に好きでもないので、微妙でした。

オススメとしては、AI系の情報戦サスペンスを初めて見る人にはお勧めです!
逆に経験者は、最後まで既視感のある展開に、いまいち盛り上がれないと思います。

以下明確なネタバレは避けますが、
本編の方向性に触れます






詳細感想ですーーーーーーーーーーーーー


言ってしまえば、今作はAIを出しに使った人間VS人間の構図です。1ミリもシンギュラリティではないので、広告詐欺…というほどでもないのでしょうか…とりあえず期待外れでした。

人間VS人間の構図は事件発生段階で発覚するので、シンギュラリティのミスリードすら存在しませんでした。最初にも触れましたが、今作においてAIは単なる舞台装置であり、出汁に使われているだけです。

AI物語が好きな身からすると、いかにもな人間賛歌的で、AIは全く対等な存在として描かれていません。作中でAIはあくまで「大きすぎる力」の象徴としてしか描かれていませんので、AIとしての面白さは描ききれていないです。AIを完全に人間の道具として描いているその上で、中途半端にシンギュラリティを匂わせるようなシーンが挿入されているので、違和感が拭えません。お前は何がいいたいんだ?と思ってしまいました(すいません…)
もしこちらのテーマで言うなら「サマーウォーズ」の方が、いろんな面においてネットワーク社会を面白く、また恐ろしく描いておりますし、テーマもかなり深掘りされています。

他の畑のサスペンス作家が、AIをテーマにしようという思いつきのアイデアから切り込んだ作品、という感じで、切り込みの深度が浅いので、AI作品としては描写が微妙です。そのため、「AIは人の役に立つのか」という問いかけのメッセージ性は全く的を射ておらず、説得力に欠ける臭さがあります。本当にそれを描きたいのなら、このプロットは破綻してます。
テーマは間違いなく、「人は人にしかできないことがある」であり、人間賛歌の為にAIが踏み台みたいに使われてます。人間賛歌はいいのですが、AI出しといてその描き方は…と思ってしまします。

…なんかAI作品好きすぎて、AIの肩持ちすぎてすいません。

しかし、単純にAI抜きに対人間の情報戦サスペンスとしても見応えに欠けます。
主人公がピンチを切り抜ける様はご都合主義展開が多く、それなりにおお!ずる賢い!というシーンはありますが既視感がある戦略ばかり。

ストーリープロットも、もれなくどこかで見たことがある展開のみ。お決まりの展開Aもありますし、涙を誘うような(?)お決まりの展開Bもきっちりとありまして、はいはいとなります。
黒幕も、ひねりがなく、まぁそうなるよねって感じです。
しかしながら、展開だけでなく細かい演出もひどいです。決戦シーン、まず導入から盛り上げにかけますが、天才vs天才の構図として最後の追い詰めはあまりにも稚拙すぎます。あれほどの知能を持つ敵は、あんな方法ではボロは出さないと思います。中学生か高校生が書いたのかな?というような、これまた既視感のある最後の詰めに、そこまで爽快感はありません。

キャラクタはまあまあ魅力的ですが、やはり主人公の主人公感が薄いんですよね。自分で切り開いているというよりは、物語の展開の都合に助けられている…というような感じです。

そんな感じの映画ですが、B級映画かなと思ってみれば、楽しめると思います。
お決まりのプロットが詰まっているということで、ある意味マンガ的なプロットなので、漫画やアニメにあまり馴染みがない方は新鮮だと思いますし、馴染みがある方でもそこそこは楽しめますので!

大沢たかおが好きな方は是非見てください!

役割は人間賛歌の最たる例でクッサクサ(の割に予想範囲以上の活躍はしない)でしたが、三浦友和さんのキャラがわりと好きでした。
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