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12か月の未来図のろのレビュー・感想・評価

12か月の未来図(2017年製作の映画)
4.8


パリの名門校から郊外の中学校へ。
生徒との関わり方を模索する一年がはじまる。


教育は常に先のことを見据えている。
中学校で学ぶのは高校受験のためだし、高校で勉強するのは大学受験のため、そして単位を取り卒論を書くのは就職するためだ。
「将来 楽をするために今頑張るんだ。」そう言われてきた私たちは、学生時代をただの“準備期間”のように過ごしてきた。
しかし本当にあの時間は、社会に出るための1つのステップにすぎないのだろうか?

ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスさんは「まだ見ぬ未来を考えるな。束の間のこの今だけを生きろ」と言う。
彼は「未来のために生きろ」とは言わなかった。

「勉強をしないお前は将来、密売や暴力やそんな馬鹿なことで人生を棒に振るんだろうな。」中学校に赴任したばかりのフランソワは、騒がしい子どもたちをこんなふうに脅す。
しかし“将来”のことを語ったところで子どもたちの心には響かないと気付いていく。


「君たちに本一冊読んでもらいたい。ケバブと同じく本も君たちの栄養になる。」
「ゴシップは好きか?パン一枚盗んだ罪で19年投獄された男の話を知りたくないか?」
生徒たちを“レ・ミゼラブル”の世界に誘うフランソワ先生。
彼の授業は、いまこの時間を楽しむ勉強になっていく。


ヘミングウェイの世界一短い6単語の小説。
“売ります。赤ん坊の靴。未使用。”
「もしかしたら赤ちゃんがいたのかも!」
「私だってこれぐらい作れるわよ!」
生徒たちが小説の世界をぐんぐん広げていたように、この映画もラストカットから無限につづく物語がある。


( ..)φ

課題をこなすためのテストのための、単位を取って卒業するための勉強ではなくなったのは、大学をやめてからだ。
今まで何に追われていたのだろうと不思議になる。
そして学ぶこと、それ自体が楽しくなる。
ろ