QTaka

タンク・ソルジャー 重戦車KV-1のQTakaのレビュー・感想・評価

3.0
戦場のスクラップ&ビルド。
戦って、壊す。
拾い集めて、組み立てる。
まるで、街の修理工場のように。
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戦争映画の中でも『戦車映画』である。
他の戦場と違い、戦車の中で行われる戦闘は、閉鎖空間であり、小さなのぞき窓から相手や戦況をを確認し戦う。それはまるで潜水艦のように。
という戦闘シーンも大迫力なのだが、どうもこの話の本質はそこには無いようだ。
話は、戦場よりも後方に行われている。
つまり、兵站だ。
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戦場は、第二次世界大戦の東部戦線。
ナチスドイツの戦車群と戦ったソビエトの戦車と共に戦った兵士が主人公。
このソ連軍の戦車KV-1は、装甲の厚さに定評が有り、なかなかやられない。
ドイツ軍の砲弾をその厚い装甲ではじき飛ばしてしまう。
そういう強みが有りながら、大きな弱点を抱えている。
それが、駆動系のトラブル。
重すぎる車体は、防御力と引き換えになった欠点であり、その欠点を補う駆動力が無かった。
何とか修理して、偵察のために、T-34とともに戦場に向かうものの、トランスミッションの故障で後退を余儀なくさせられる。
この場面が、KV-1を象徴する場面となる。
後退するも、戦場に留まったKV-1は、敵戦車を発見し戦闘状態に持ち込む。
ほとんど動けないまま、奮闘する。
これが、この映画のメインシナリオとなる。
とにかく、踏ん張りが利き、頼りになるタンクなんだ。
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それにしても、故障が多い。
後方の陣地では、修理ばかりしている。
それも、新しい部品では無く、戦場から拾ってきた部品で直すのだ。
廃品回収業か?中古部品でお安く修理できる、街の自動車修理工場か?
とにかく、戦争映画とは思えない会話が飛び交う。
「部品が手に入らない」とか、「壊れた戦車から部品を取ってくる」とか。
揚げ句には、敵に接収され、戦場に放置されたKV-1が最終兵器になるのだから、究極のリサイクル戦場だ。
ホントに、これ事実に基づく映画なの?
「史実に基づく」の点、この話の場合は、後半の戦場の話しがそれに当たるのだろうけど、この後方で行われた、整備、修理の話も本当なんだろうな。
華々しい戦場物語、苦境を跳ね返して戦線を維持し、勝ちきった闘いの裏の部分で、意表をついた事実が満載だ。
そして、最後の壮絶な闘いの結末は…?
相手戦車を奪取して帰ってくるっていうのは、どこかの”戦場物語”で見たような展開だが…
これ、本当に有りなのか?
たぶん、ココ事実なんだろうな。
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まぁ、戦争映画としては、ちょっと異色かもしれない。
戦場シーンは有るし、その迫力も戦車戦ならではと言えるのだろうけど、戦場よりも後方の車両整備がこの物語の肝だ。
そういう闘いの姿に、リアリティーを見た。
そこに闘いの本質が有った。
あるいは、これは現代ならば、モータースポーツに見る風景かもしれない。
F1(って、まだやってるの?)のファンの多くは、コース上を快走するマシンに興奮するのだろうけど、インディーカーでは、ピット作業やレース中のストラテジーに一喜一憂する。
私は、後者の方だ。
闘いは、コース上でのみ行われているのでは無い。
っと、話がそれたのでこの辺で。
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