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クーリエ:最高機密の運び屋のTEPPEIのレビュー・感想・評価

4.4
ベネディクト・カンバーバッチ主演の本格スパイ映画。やはりこういう繊細で、神経質な役柄を求められた時のカンバーバッチの演技は素晴らしい。しかも本作、「クーリエ:最高機密の運び屋」は米ソ冷戦時代を舞台にしたスパイ映画としても、古き良き本格派として成立しており、とても見応えがあった。二転三転、緊張感はさながらスパイ・アドベンチャーとでも言うべきか、事実に基づいたストーリーと、監督独自のシークエンスが非常にマッチしていて目が離せない。

こんなことが冷戦下であったのかと疑ってしまうほどの衝撃ストーリー。MI6とCIAにリクルートされた、セールスマンのグレヴィルとソ連高官スパイのペンコフスキーの関係と、核爆弾情報をめぐる頭脳戦。このシンプルで分かりやすいストーリーラインに、グレヴィルとペンコフスキーのドラマ、アメリカ、イギリス、ソ連という三つ巴の入り組んだ政治と情報戦争が本当に面白い。
随所に「白鳥の湖」を挟んだり、余計なセリフもなしに映像で語られる緊張感に、たまに挟むユーモアや登場人物たちの葛藤が描かれていて本格スパイ映画の入門編として、誰でも見入ってしまう工夫が揃っている。
舞台演出家出身のドミニク・クック監督は、カンバーバッチとも仕事をしてきた仲で相性抜群。カンバーバッチとスパイ映画という最高の組み合わせの良さが顕著。

カンバーバッチと並んで印象的だったのは、やはりソ連側の情報源である高官ペンコフスキーを演じたメラーブ・ニニッゼ。2人の関係性は近年の「ブリッジ・オブ・スパイ」を彷彿とさせる、差違・共通点・友情を描いており、柱となる情報源のやりとりを通し、第三次世界大戦を未然に防いだ裏にある奥行き感あるドラマがアクセントになっている。
時限爆弾じゃないけど、とにかく一刻一刻、ドキドキが止まらない作品だった。

総評として、「クーリエ」はスリリングな展開のスパイ映画であり、ベネディクト・カンバーバッチと脇を固めるキャスト達の熱演で古風だが興奮止まないスパイ映画として楽しむことが出来る。派手さなしのガチガチ本作スパイ映画こそ、スパイ映画の至高なのかもしれないと、ふと思ってしまうほど良き作品だし、スコアも良いのでぜひ劇場でドキドキしてほしい。
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