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アスのumisodachiのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.6
『ゲット・アウト』で大注目を浴びたジョーダン・ピール監督の新作。ルピタ・ニョンゴ主演。

アデレードは、夫とふたりの子どもと共にサンタクルーズの別荘へとやってきた。楽しい休暇となるはずだったが、幼い頃に体験したトラウマが蘇り、アデレードは不安に駆られる。そんな夜、家の外に自分たちとそっくりな4人家族が現れ……。

『ゲット・アウト』はそんなに怖いと思わなかったのでナメてかかったら、痛い目を見た。普通にスリラー色強めのホラーでした。問題は自分たちそっくりのヤツらが何なのかという話になるのだが、まあこれはメタファーなわけで。本作は【怖い思いをしてメタファーを味わう】という内容になっている。

『ゲット・アウト』もそうだったのだが、メタファーだらけなのに全然難しくなくて、なんならある程度答えも説明しちゃうのがジョーダン・ピール監督なのかな。「いや、そこまで言わなくても」というほど暗示的な台詞が出てきたり、最後に種明かしがあったりする。でもって、私はそれがイヤなんだよな。

謎の人物が立っているあたりから、終盤まではかなり好きだった。特に、ルピタ・ニョンゴ大活躍のクライマックスはフォーサイスの「In the middle somewhat elevated」(コンテンポラリーバレエの演目)を観ているようでテンションが上がった。画面の繋ぎ方、空間の使い方、ルピタ・ニョンゴの物言う身体性、すべてが調和して芸術的だった。

でも、そこから最後までの説明部分がなあ。醒めちゃう。そこまでの展開は予測がつかなくてハラハラしたし、「ああいうことかな?こういうことかな?これはアメリカのこういう現状を表しているのかな?」と考えながら楽しんでいたのに、ものすごーくわかりやすい部分ギリギリまで喋っちゃうんだもん。もっと謎を残したままでいいのに!わからなくてもいいのに!

それぞれキャラも立っていたし、スリラー展開も面白かったので、つくづく説明過多な部分だけが残念だった(オチは読める)。

あと、『ハイ・ライズ』で低層階の住民を演じていたエリザベス・モスが、本作では隣人の裕福な白人女性を演じていたのが面白かった。エリザベス・モスは『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でも典型的なアメリカ人女性を演じていたし、けっこう抽象的な作品に出がちな印象。おそらく彼女が普通っぽくありながらも、典型的な【白人・ブロンド・アメリカ人】の要素を有しているからなんだろうな。

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