マツシマ

アスのマツシマのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.5
変な映画!!!!!!!

海沿いにある別荘地に泊まりに行った4人家族
ある夜、別荘の玄関先に不審な4人の人影が現れる
通報をほのめかしても立ち去ろうとしないその4人に近付くと、それは「自分達に似た顔をした、しかし決して自分達ではない」何かだった


上記あらすじ程度の予備知識しか入れずに観たせいもあって、本当に予想出来ない展開の連続で「次どうなるの?」というか「これは一体何が起こり続けているの?」と目の離せなくて、とにかく変な映画です
似たような映画を見たことがない

前作「ゲットアウト」(最高!)で「鹿ドン」をやってのけたジョーダン監督だから、今作もあっと驚かせて(笑わせて)くれるだろうと期待したのですが、あっと驚くというか、ずっと口が半開きでした
「何……?これ何の話……?」

終盤まで、いやもしかしたら最後まで、これがホラーだと断言出来ない、もしかしたらコメディなんじゃないか?と思ってしまうほど、妙な緊張感の持続が神がかっています
ホラーとコメディって、フリの段階では結構似ていて、怖いオチ(リアクション)にすればホラーで笑えるオチ(リアクション)にすればコメディになるというか、本当に分岐次第でしかないんですよね(あとBGM)

だから演出は間違いなくホラーなんだけど、これは「コメディに行く前」の分岐なのでは?と疑ってしまうくらい、本当に先の見えない映画なんです
何回言うんだよ

コメディ出身の監督だっていうのも関係あるのかな…

前作から健在なのは顔芸
とにかく役者陣の顔力の凄まじさ
子役も物凄い顔力
全員石原良純レベル
石原良純だらけの世界

主人公家族αと主人公家族βは同じ俳優さんらしいのですが、あまりの表情の違いにしばらく分からなかったほど
(私が鈍いのか)

特に主演のルピタ・ニョンゴさんの豹変ぷりたるや素晴らしく、これ現実でやったら「おキツネ様に憑かれておる!!!」いうてお祓いされるレベルですよ
本当に凄い
指先に至るまで感じさせる妙な違和感、ラストまで観ると今までの動きや表情の意味が分かる精密な役作り
離れ業みたいな演技な上に、ここまで違う人間まで同時に演じたら気が狂いそう!
やはり既に何かに憑かれているのでは!?


予想外の展開にハラハラされられっぱなしの映画でしたが、終盤どうしてもリアリティラインが気になりもします

前作「ゲットアウト」もそれなりにぶっ飛んだ設定で、んなアホなと言えばんなアホななんですが、それでも鑑賞中は妙に納得させられてしまう、上手いハッタリの映画でした
しかし今作はちょっとこう「いくらなんでも…」というか、冷静に考えてそれはどうなの?とツッコんでしまう自分もいて、騙し切られなかった印象でした
ハッタリが大きくなったせいで、ちょっとハリボテ感が見えちゃったというか

「冷静に考える」隙間を与えないのが良いなホラー映画だとは思うのですが、今作は「何これ?どうなるの?」を考えさせられ過ぎて冷静になる隙間があったのかな
密室劇じゃないのも要因かも知れません
場面転換があるとどうしても素に戻るので…

ただ優れたエンタメには、露骨ではない形ではあるものの人間にとって普遍的なテーマが内包されているもので
それを感じる際に脳がスーッと冷静になったのもあるかも知れません


ともあれ、とにかく変なものが観られて楽しく、間違いなく次作も観させて頂くテンションになれました!
次はどんな顔芸が見られるのか!

そして再びfuck the policeは流れるのか!
流してくれ!