小松屋たから

たちあがる女の小松屋たからのレビュー・感想・評価

たちあがる女(2018年製作の映画)
4.1
これまでに見たことが無い世界観だった。だから映画は楽しい。

アイスランドの環境テロリストの女性が主人公で、その頑な信念には必ずしも共感しがたいところもあるし、これが、仮にイスラム系の主張の持ち主の物語だったら、この映画のトリッキーな演出や、美しい風景描写、巧みなストーリーテリングがまったく同じだったとしても、欧米視点では正当に評価されたのかどうか、ちょっと考えさせられる。

でも、グローバル経済の過剰な進展、移民差別、地球温暖化といった切実な社会問題に対するこの作品のアプローチは、斬新というかなんというか、もっとはっきり言ってしまえば(いい意味で)「へんてこりん」で、とにかく面白かった。

アルプスの少女・ハイジが、かなり真剣にトム・クルーズをやりました、というような愉快な「違和感」。

そもそも住環境が厳しく、人口も少ない。男女問わず、生きること=戦うこと。でもだからこそのどこか楽観志向、というのが、アイスランド流なのかも。

とぼけた味わいの劇伴奏者、コーラス隊を実際に観客に見せながら話を進めていく手法は舞台の音楽劇のようだが、きっと、主人公のその時の気持ちを代弁するとともに、あなたは気づいていないかもしれないが、たくさんの味方が周りにいるんだよ、というメッセージでもあるのだろう。

本作はジョディー・フォスターによるハリウッドリメイクが決まっているとか。砂漠でシェールガス採掘会社と戦うような社会派ハードアクションで、音楽も「マッドマックス」みたいなハードロック、パンクになったりしそうだけど、観たいような観たくないような。

一映画好きとしては、アイスランドの映画ってことでいいと思うけど。。まあ、ビジネス的観点も大事なことですよね。