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ジェイコブス・ラダーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ジェイコブス・ラダー(2019年製作の映画)
3.4
『パラサイト』すげぇ!!
もしかしてアジアで初ですか??これで邦画も言い訳できなくなりましたね。頑張って貰わないと!

本作はもちろんアカデミーなんて擦りもしない作品だけど、ホラー好きとしては避けて通れないビッグタイトルのリメイク作。でも壊滅的に評価が悪い…。アレのリメイクだと思わなければ、私的にはそこまで悪くは感じなかったのだけど、タイトルになっている『ジェイコブスラダー』そのものの捉え方が根本的にお粗末になってしまっているように感じたのは残念なところ。そういうことじゃないんだよね…せめてタイトルを変えた上で、アレとの正面きっての対決を避けてればもう少しマシな評価が貰えたのかも。

戦争を背景に置き、何が現実なのかを見失っていくというオリジナル同様の展開を見せつつ、差別化をするためにアレコレと弄りまわしたような内容。何というか製作陣の「差別化」に対する必死さが永遠と付き纏い過ぎていて、『ジェイコブスラダー』という題材でコレをやらなければならない必然性も時代的な適応性も私的には感じられなかった。普遍性という隠れ蓑の便利さは実感!

とはいえ、「死」を最序盤に配置し、天使ガブリエルによる救いを受け入れるまでを描いたオリジナルを逆転させたのは面白い。本作では救いとはあくまでも「生」なわけだけど、どう足掻いても救いとはならない生に対する絶望と、それでも縋り付いていたい生への執着、そしてそれ故に受け入れられない(正当な)心の弱さ。そんな壊滅的状態の生を比喩でも何でも無く明確に地獄だと言い切った本作の尖り方と攻撃姿勢には感服。あの有名なセリフも、こちらに伝わってくるニュアンスが変わっているし、クライマックスでの銃を手にしてからの一連のシークエンスで体裁を整えているバランス感覚も良かった。

オリジナルの根本は戦争を含めた理不尽かつ不当に押し付けられる死への批判と残された者たちへの救済だけど、別角度からよりわかりやすくより直接的に戦争批判を貫いたのが本作特有。実験薬の使い方も、オリジナルではテーマを肉付けするための暗喩的・婉曲的役割に徹していたのに対し、本作では一直線に直接ぶち込んできてるから清々しい。

主人公のジェイコブが自身で口にする「誰かに自分の居場所を取られる」という言葉、雨とともにやってくるポールという男、そして地下へと下るイメージ。現実を現実のまま生きることをとことんまでに「負」だとする描写の連続。そしてそんな状態でも、(オリジナルと同様な)霊柩車イメージから逃げるという生への執着を見せつける主人公に辛くなる。

霊柩車以外にも地下鉄の広告、横たわるオッサン、氷水風呂等々オリジナルオマージュがふんだんに散りばめられているのだけど、広告以外はそれほどうまく機能してるとは思えないし、無理矢理『ジェイコブスラダー』に寄せてる感が凄くて、なんか微妙な感じだった…。

これの脚本のジェフブーラーさんは『プロディッジー』『ペット・セメタリー』と本作を見たけど、もう少し突き抜けた感が欲しい!全然ポンコツじゃないんだけど、ちょっと大人しい。もしかしたら監督の責任の方が大きいのかもしれないし、ニコラスペッシェ監督と組んだ『呪怨』新作に期待!
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