偽名祐司

任侠学園の偽名祐司のレビュー・感想・評価

任侠学園(2019年製作の映画)
4.6
昭和のベタと王道を詰め込んだ
隙の無い完璧なサービス満点任侠ギャグ作品。
多分欠点はただ一つ。映画でやる必要性が特にない。ってだけ。
落差オチ、繰り返しネタ、等の笑いの完璧さ。細かい部分にも手を抜かない。

話はアプリ参照で。
阿岐本組は組長の教えで人助けをモットーとする構成員6人の地域密着型弱小ヤクザ。
その若頭である中間管理職の日村は、いつも親代わりである組長からの難題に頭を抱えている。
今回は経営が傾いた高校の建て直し。
部下と共に出向いた先は何の特色も無い平均的な高校、だったはずなのだが当然そんな訳も無かったのである。学校再建に向けて阿岐本組の奮闘が始まった。

OPタイトルの出し方と効果音、でキッチリ解る「任侠をこう使います」という清清しさ。
そこに畳み掛ける前代の組長の遺影に「高木ブー」の時点で、もうこの作品の方向性が明示されてます。

「MOZU」等で有名なまじめな若頭・日村に西島秀俊、人情に篤い組長に西田敏行使ってる組み合わせがもう面白い。他にもアウトレイジ常連組や伊藤敦史等を使いボケと突っ込みがキッチリ用意されています。

所謂「任侠ギャグ」というか落差オチを基本とする作品。人によっては古臭いと思うかも。
ですが俳優のアドリブも入って安定した面白さですし、そこに吉本的な繰り返しネタもキッチリ入りギャグコメディとしては十分な作りになってます。

指さすんじゃないよ?に始まり何度も使われる阿岐本組三ヶ条である。映画終わる頃には余裕で観客も覚えるでしょう。「かたぎには手を出さず」「勝負は正々堂々と」「出されたものは全て食う」。3つ目は映画オリジナルらしいですが、十分溶け込んでいます。あの豚はちょっと…ねえ?

そんな昭和側に対する学生側の世代ギャップも十分に面白く、ベタですが「学校で爪弾きにされてた学生が阿岐本組に出会い心を開き交流していく」展開は安心して観てられます。あ、おとしまえって相談してググって良いんだ?

学生、教師、親、阿岐本組に相手ヤクザ。それぞれのキャラクター全員わかりやすく話や展開も安定で。暴力団対策係の警察が無駄に濃かった気がしますが。「パワハラはヤクザの専売特許」、とか「ヤクザであって暴力団ではない」、色々愉快な台詞も多いです。
細かい笑いのネタもふんだんにあり色々な世代にアンテナが張ってあるのが良いですね。

話も阿岐本組と学生の交流から、保護者側に後ろ暗い奴がいて、陰謀めいたものがあり、学生同士の友情もあり。で、笑いと涙と説教に乱闘。
全部入りの安定感です。

個人的に最高だったのは後半「かたぎには手をださず」を逆用され半グレ的な人々に人質を取られ包囲されたシーン。
スカッと伏線使ってぶちのめし、啖呵を切る。この啖呵本当に最高でした!

ラストも安定な展開で話を収め、
最後に西田敏行のバラードを使い締める。
スタッフロールにはNG集まで流すサービス満点ぶり。
スタッフロール後にも一幕あります。
正直駄目な所が何一つとして見つかりませんでした。
あえて言うならTVで十分で映画でやる必要性が無い位でしょうか。
原作も続編安定してますし、是非次作も映像化して欲しい所です。
笑いの方向性が生理的に合わない限り誰にでも勧められる傑作です。
偽名祐司

偽名祐司