銀色のファクシミリ

任侠学園の銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

任侠学園(2019年製作の映画)
4.5
『#任侠学園』(2019/日)
劇場にて。原作未読。面白かったな~。アウトロー人情モノ、異文化ギャップ、いい意味で古典的で温かいコメディ。期待する通りの映画だけど、その期待を全部少しづつ超えてくる。しっかりした物語に、ベテラン俳優陣がシリアスとコメディの緩急をつけて引き締めた快作。

あらすじ。昔気質の任侠・阿岐本組。社会奉仕に積極的な組長(西田敏行)が今回引き受けたのは、高校の経営再建。代貸の日村(西島秀俊)を中心に協力することになり学校に向かう。平穏に見えた学校だが多くの問題を抱えていた。組長は「生徒さんをみな舎弟だと思って面倒みてやれ」と日村を励ます。

感想。昔気質の任侠と高校生たちのカルチャーギャップコメディで進みながら、様々な問題に取り組む中で起きる不自然なトラブルとチラつく不穏な影。しかし「こっちが本業ですから」と腹が座っている阿岐本組の面々が頼もしく見えてくる楽しさ。とにかく抜けのいい痛快娯楽作品。

痛快な明るさとアウトロー活劇を支えている根本は同じで「上位者への反撃」。コメディパートの根幹は「最後に笑われて痛い目にあうのは上位の者」という、いい意味での昭和の笑い。弱いものイジメで笑いをとらないスタイルが貫かれているから、湿りがなく明るく楽しい。

またシリアスパートは弱きを助け強きを挫く。ダーティワークの心得充分のプロフェッショナルによる、それでも筋を通す弱小任侠団体らしい駆け引きの妙味。西田敏行、西島秀俊、生瀬勝久、光石研、中尾彬、白竜らベテラン勢の緩急のつけ方、場の空気の替え方はさすがの一言で、作品全体を引き締める。

「難しく考えず楽しんで」という映画を作るのは実は大変なのに、そう仕上げて観る側にストレスフルな楽しさを提供してくれる作品。エンドロールのNG集まで含めて、監督スタッフ、キャスト全員で「明るく楽しい映画を観せてやろう」という気持ちも見える映画でした。シリーズ化希望です。感想オシマイ。
(2019年9月29日感想)

#2019年下半期映画ベスト・ベスト主演俳優
#2019年映画部門別賞
・西田敏行/『任侠学園』
『任侠学園』は明るく楽しい映画ですが「でも軽くないし安くはないよ」としているのは、この方の会話劇。生瀬勝久との緩急をつけたテンポのいい会話でコメディパートを作り、光石研の絡め手の圧迫は一刀両断。毅然としてはねのける。そして白竜とのやりとりは互いの首筋に白刃を当てているような覚悟の見せあい。時に任侠の恐ろしさ、「本物」を感じさせて陳腐さを失くし、作品に緊張感を醸し出す。

だから明るく楽しいけど、軽くないし安くない、ちゃんと本物の重みのある映画になっている。音楽や特殊効果にも頼らず、相手の演者との会話劇だけで、笑いと緊張感を生む技量。やっぱりスゴイ俳優さんだと思いました。

#2019年下半期映画ベスト10
『#任侠学園』
間違いなく2019年邦画で一番、誰にでもオススメできる明るく楽しい映画。コメディにも任侠にも、弱いものイジメではなく、強者への反骨が貫かれているから痛快な娯楽映画になっています。シリーズ化希望。
(2019年12月31日感想)