それにしても、ミュージカルとヒップホップの親和性ってこんなに高いものだったんですね。よく考えてみれば分かりそうなことだけど、実際に劇中の会話が生活音と重なり合ってシームレスに歌唱へと繋がっていくのは観ていてとても腑に落ちるというか必然性に満ちているというか「そもそもこいつら放っといたらすぐ歌い出しそうだもんな」みたいな感じ、すごくある。遠いラテンアメリカのことをほぼ何も知らず、移民問題もあまりぴんとこないわたしみたいな極東の島国の民にもノリ一発で物語に誘ってくれる登場人物紹介のターン、すごく良かった。
その後しばらくは主人公ウスナビの名前がなかなか頭に入ってこなくて「不思議な名前だな…?」と思ってたんですけど、その由来が語られたときにいきなり物語の解像度が上がった気がしました。移民というバックボーンとその立ち位置を我々みたく異なる文化圏で暮らす層にも明快かつユーモラスに知らしめる、極めて巧い脚本と膝を打った次第です。ついでにウスナビ、「絶対どこかで見た顔だよな…?」と記憶の底をさらってようやく思い出した。アリーだ!ガガ様のバイト仲間のナイスガイの彼だー!正統派イケメンというよりはタレ目でお人好しっぽいこの見てくれ、本作をきっかけに売れるとしたらウィル・スミス枠のような気がするのですが果たして。
原作ミュージカルには存在しないはずの映像表現、プールでの群舞や駆け出すヴァネッサ、ベニーとニーナのダンスシーンなどがとびきり印象的だったのはまだ想定内として、明日には帰郷してしまうウスナビを翻弄するサプライズの数々には「叙述トリックかよ?」と呆気にとられましたよね。ええっ、それってアリなのおおお?と叫びたくなってしまった。
それと、本作に関してはエンドロールを最後まで観るのが吉ですね。ピラグア売りのおじさんがなんでこんなにフィーチャーされるんだ?と思ったら、彼こそが原作者であり音楽を手がけミュージカル版でウスナビを演じたリン=マニュエル・ミランダだそうで。終映後にパンフを読んでひとしきりニヤつきましたよね、うふふ。いい映画でした。