ラウぺ

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明のラウぺのレビュー・感想・評価

4.2
2017年に放映されたTVアニメ『メイドインアビス』の続編。
当初は第2期のアニメ放映とのことでしたが、劇場公開に変更。劇場版はPG12からR15+に引き上げ。
内容の過酷さ故に、TV放送を諦めての劇場公開かと思いましたが、本作の続編としてTVの続編の制作が決定したとのこと。

人類に残された最後の秘境、巨大な縦穴「アビス」。探窟家を夢見るリコはあるときアビスの入り口で人間そっくりのロボット・レグと出会う。偉大な探窟家の母親の後を追い、リコはレグとアビスの深層を目指す・・・物語はついに深界五層へ。
映画は「これまでのあらすじ」などもなく、いきなり本編へ。見る人はTVアニメもしくは総集編を観ている前提であり、リコたちの前に立ちはだかる過酷な運命を見届ける覚悟のある者のみ先に進めるようになっています。
言うまでもないことですが、評判が良いからといっていきなり劇場版から観るようなことのないように。上昇負荷で即死します。

TV版1期でボンドルドの非道ぶりに直面し、それぞれの想いを胸に五層を行くリコたちですが、ボンドルドとの邂逅はやはり予想を超えた過酷さで、胸をえぐられる体験を覚悟しなければなりません。
物語は五層の最深部にあるボンドルドの本拠地でのリコたちとの闘いとボンドルドの娘のプルシュカとの出会いを描いていますが、105分という上映時間に詰め込むためもあってか、セリフがやや説明的に傾き、新たな謎とその解決が順番に登場するので、どこか予定されたコースを走る乗り物に乗せられた感じが付きまとうのが惜しいところ。
ボンドルドの常軌を逸した狂気=探求心は更にパワーアップし、既に生体としての体を成していない異常性をイヤというほど見せつけられるところは、本作がR15+という制約を受けてでも妥協せずに描きたかったポイントなのでしょう。
もはや敵同士ですらなくなるボンドルドの純粋な探求心の奥底にあるものを見せられて背中が粟立つほどのインパクトを受けるのですが、どうにも余裕のない物語のおかげで一本調子な印象がありました。
リコを守りたい、というレグの想いは終始一貫していて潔いのですが、リコとナナチはボンドルドに対する深い怒りの気持ちはあるものの、アビスへの探求心や冒険への強い葛藤からボンドルドの全てを否定できない複雑な想いを抱いていることが窺われます。
これは物語全編に横溢する冒険に対する作者の抑えがたい憧れと、それを描くことへの強い衝動と密接に関わっているであろうことは間違いありません。
小さな子供の冒険譚であるはずなのに、そこに描かれる容赦ない残酷さと未知なるものへの憧れというアンバランスさは、このシリーズの最もオリジナルな魅力的な部分でありますが、あまりの猛毒さに、空恐ろしいものを感じてしまうのです。
このあと更に続く物語がどのようなものであろうと、リコたちがアビスの深部に向かうことに躊躇しないのと同様に、ドロップアウトしようなどとは到底考えられないところです。

物語はこのあとついに帰還不能とされる第六層へのラストダイブ(絶界行)へと進むことになるようですが、アニメの2期がどのようなものになるのか、覚悟して待ちたいと思います。
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