せーじ

二ノ国のせーじのレビュー・感想・評価

二ノ国(2019年製作の映画)
2.5
212本目はシネマイクスピアリで鑑賞。
平日夕方の回だからか、客席はガラガラ。好事家と家族連れがパラパラという感じで落ち着いて観ることが出来た。

「妖怪ウォッチ」シリーズや「レイトン教授」シリーズを手掛けたゲーム制作集団・レベルファイブが2010年から展開している「二ノ国」シリーズを、世界観はそのままにオリジナルストーリーでアニメーション映画化。監督には歴代のジブリ映画の演出や短編アニメーション映画「サムライエッグ」の監督を務めた百瀬義行氏を、音楽には久石譲氏を迎え、ポケモンや妖怪ウォッチのアニメーション映画を製作しているOLMが制作した。脚本はレベルファイブの社長である日野晃博氏が書き下ろしている。

…と、ここまで書くと、安パイで手堅い座組であるように見えるのだが、ご存知の通りネット上では酷評の嵐。正直なところ、観るのをどうしようか迷ったのだけれども、もともとこの作品は観るつもりでもあったので、何がどう酷いのかを確かめるべく鑑賞することに。




…うん、そこまで酷くは感じなかったです。
良いとも思わなかったですが。

世界観自体は、普段暮らしている現実世界とは別にもう一つ世界があって、そこには自分と命が繋がっている"もう一人の自分"がいて…というどこかで聞いたことがあるような設定が、まぁまぁファンタジックに舞台立てされていて、その面白さはある程度は表現できていたのではないかなぁと思うのだが、肝心な「どうしてそうなるのか」という理由や「どのようなロジックでそうなるのか」という理屈にあたることが、最後まで全く描かれていない。ストーリーの要素となるものを並べているだけで、登場人物の根拠のない推測や強引な話運びだけでどんどん話が進んでいってしまうのだ。そのうえそれが厳しくなってしまうと、今度は登場人物自身がどんどん物語のロジックを説明しだすようになってしまう。せっかく舞台立てした世界観があれよあれよと言う間に手に余ってきているのが見え見えで、とてもガッカリしてしまった。
明らかに脚本が練り込まれていないと思う。

また、叩かれている理由の一つである、ヒロイン役の永野芽郁さんの演技なのだが、驚くほど棒読みでビックリしてしまった。ただ、これは彼女自身の資質の問題ではなく、ディレクションの問題なのではないだろうかと思う。なんと言うか、コントロールされていない演技というか、そのままやらせてしまっている演技と言うか。現にいくつかの実写の劇映画では、瑞々しい演技を披露している作品もある訳で、声優として演じるのが初めてだったということも含めて、彼女だけを責めるのは酷な気がする。とはいえストーリーの上では重要な役回りなので、ヒロインが魅力的に感じられないというのは非常に残念だった。
そして、車いすの件なのだが「異世界では使う必要がなくなる」ということだけを設定として置いたまま、そのロジックが例によって描かれていないので「"彼"にコンプレックスを抱かせるための道具」以上の役割を果たしていないのが、叩かれている原因なのではないだろうかと思った。最終的に"彼"は障害の有無を選ぶというよりかは、異世界のヒロインに惹かれてああいう決断をしたと言えると思うので、正直なところネット上の批判は半ば言いがかりに近い内容である様にも感じるのだが、要素だけを並べてそれらを繋げるロジックをキチンと設けようとしていないからそういうことになるのだと思う。

脚本を徹底的にブラッシュアップしてロジックをしっかりと繋げて、演者のディレクションが的確に行われていたら、もっともっと良くなった作品であるはずだと感じられただけに、とても残念に思ってしまいました。
「あした世界が終わるまでは」といい、「並行世界モノ」は鬼門なのかもしれませんね…
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