ゼロ

ナショナル・シアター・ライヴ 2019 リア王のゼロのレビュー・感想・評価

4.8
イアン・マッケラン氏の圧巻の演技を目撃せよ。

リア王は、シェイクスピアの四大悲劇の一つ。400年前に作られた物語を、今の人間が観ても、感動するというのは、人間の本質は変わってないことに気付かされる。

リア王を演じたのはイアン・マッケラン氏。ブリテンの王であるリアを演じたが、圧巻の演技であった。リア王の設定に限りなく近い年齢で演技を行うのもあるのか、演技がリアルであった。

リア王は、リア王が認知症なのか、狂気なのか定かではないか、落ちぶれていき、最後は主要人物の多くが死ぬ物語だ。物語を観ていくと、リア王の傲慢がいけなかったのか、姉妹のずる賢さがいけなかったのか、コーディリアのお世辞を言えない性格がいけないのか、ケント伯の箴言がいけなかったのかは分からない。最後までボタンが掛け違ったまま、終幕を迎えることになる。

イアン・マッケラン氏は威厳のある王も、落ちぶれてしまった人間も、下ネタを言う裸の王様も、死に際の老人も全て演じ切った。4時間にも及ぶ舞台の中に、人生の一生が詰まっているというくらい濃い内容なので、よく演じ切ったな…と賞賛の声しかない。

最後にシェイクスピアには道化が登場し、彼は全ての権威を譲ってしまったリア王に言う。

「年をとったら、それ相応の知恵を身につけろということさ」

何もなくなってしまったリア王。バカなだけの道化。
あなたはどう年を取っていきたいのか考えさせられる。
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