銀色のファクシミリ

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

2.3
『 #ドラゴンクエストユアストーリー』(2019/日)
劇場にて。いい所、楽しめる所も多くあり比較対象に挙げられている残念映画とは質は大きく異なります。むしろ多くの要素は好感の持てる出来栄え。しかしその出来ゆえに激しい落差を味わうことになる映画でした。覚悟していてもキツかった。

酷評の嵐を招いているのは、ある意外性を持たせた展開ほぼ一点。まずは消し飛ばされてしまっているように見える、この映画の好きなところを挙げたいと思います。そういうところを作ってくれているスタッフさんがいるもの確かなんですよね。

まずはなにより戦闘シーン。重傷級の吹き飛ばされ方でも立ち上がるキャラクター、全体攻撃を感じさせる剣さばき。コマンド入力式の原作ゲームともリアルとも異なる、しかしドラクエらしさ満載の戦闘シーン。エンカウントモンスター、中盤の強敵との戦い、最終決戦までいづれも良かったです。

また駆け足気味ながら103分に収められた物語も良くまとまっていたと思います。世界や土地、魔法への説明セリフを極力排しビジュアルで描いたことで、ストーリー進行が停滞していない。テンポよく話が進み、ついに「天空の勇者」が顕現したシーンの格好良さ。狙い通りの名場面になっていると思います。

声を担当した俳優キャストも、いつもの実写映画のときよりも大きな芝居で統一されていたので、そういう点で違和感なく。フローラ役の波留さんの技量の高さと、声の強さが活かされた有村架純さんのビアンカのはまり方はさすが。

左様に良く作られた物語は、終盤に「酷評の嵐」の展開がはじまり、この作品は文字通り破壊されました。後に残るのは虚無と荒涼たる景色と、冷え切った劇場の空気だけ。本来は全力回避すべき「興ざめ」を作品側から積極的に仕掛けてきたような展開がもたらした結果は、作品の自殺とも云うべきものでした。

展開と演出それ自体は目新しいものではなく、脚本の意図もわかります。しかし扱い方に慎重さとデリカシーがなさすぎたと思いました。ドラクエ原作、夏休み親子向けで集客を見込んでいる映画で、やるべきことだったのか。この結末で誰が得をするのか。大きな疑問符だけが残る映画でした。感想オシマイ。
(2019年8月6日感想)