小松屋たから

影に抱かれて眠れの小松屋たからのレビュー・感想・評価

影に抱かれて眠れ(2019年製作の映画)
3.1
「最も危険な遊戯」「蘇える金狼」「ヨコハマBJブルース」…松田優作演じる男たちは、頭も切れるし戦闘力も高い。そして、容赦なく殴る蹴る殺す。薬もナイフも使い、銃も撃つ。ついでに歌も上手い。で、とにかく女性にもてる。映画自体、かなり無茶苦茶な展開ばかりだが、とんでもなく面白い。

やっぱり、日本の男性の役者さんなら、一度はあんな自由奔放でぶっ飛んでいるキャラクターを演じてみたいと思うのだろうし、監督やスタッフたちもあの頃のハードボイルドにはきっと憧れている。

そんな、夢を叶えたのが今回の加藤雅也と制作陣ということか。タイトルロゴや劇伴から松田優作へのリスペクトは十分伝わってきた。横浜の野毛の風景をうまく使って昭和風のねっとりした熱さは醸し出せていたし、他の出演陣にも火野正平、中村ゆり、余貴美子ら「らしい」空気を纏った役者さんたちが揃っていた。

物語はちぐはぐで、そもそも主役が命を捧げようとする対象からして間違っている気がするし、他のキャラクターも存在理由や行動動機が中途半端。でも、それも昭和のハードボイルドのいい意味での「適当さ」を踏襲したと思えば、許容すべきか。

ただ、やっぱり「コンプライアンスの時代」なのか、暴力や流血、その他あれこれ、色々控えめ。あー、そこはもっと攻めようよ、というシーンがたくさん。配信やレンタルのみのいわゆる「Vシネマ」系ではなく、あるクラス以上の役者さんたちを起用してBSとはいえテレビ局が絡む一般劇場公開作品となると、ここが今の限界点になるのだろうか。

でも、きっと作り手たちももどかしく思っていることだろう。「孤狼の血」があれほど称えられたのだから、まだまだチャレンジしていって欲しい。別に暴力が好きだという訳ではないけれど。