とりん

寄生体XXX/スキンウォーカーのとりんのレビュー・感想・評価

3.4
2020年122本目

人間の命や記憶、その全てを奪い、生きながらえている謎の生物を追った物語。

あらすじの入りだけ読んでいたが、明らかにB級感漂う話だったので、全然期待せずに鑑賞。
序盤は謎の語りがありながら、なんの説明もなしに始まり、どんな入り方だ、退屈な映画かなと思っていた。
ストーリーとしてはかなり弱く感じられるし、最後まで何が言いたかったんだとなったのだけれど、どこか切なさが残る映画だった。しかし着眼点はかなり面白いと思った。

これまでも人間の身体をのっとるといった寄生生物的なモンスター映画はいくらでもあった。
ただその本体は見せずに、あくまで自分が何者かもわからず、人類全体に何かしようということはなく、ただ生きるために奪い、そうして生きているということを見せ続けるというのは斬新。
はじめは何を言っているんだと思った愛の説明についても徐々にわかっていく。
母からの愛は確かにあったけれど、それを感じたのは誤って母を奪ったからであり、自分自身への愛というものを知ることがない。
自分が何者であるかもわからないから。
しかしそんな奪い続ける生活の中で出逢った愛する女性。
最後にわかるがこの愛も元は逃げ出した夫を奪って感じたものだけど、違う人に映っていってもその気持ちが消えることはなかった。
これが自分自身の愛なのか。そして誰からも理解されることのない存在。
奪わずとも死に切れない、永遠に続くものはないはずなのに、自分の命は終わらないのか。最後に語る台詞は考えだすと深い気がしてきた。

これはあくまで人を移りゆく謎の生物の話ではあるが、普通の人にも置き換えることもできるかもしれないというのはあまりにも考えすぎか。
序盤は駄作だと勝手に思ってばかりだったけど、最後まで観るとかなり違うように観えた。

ただのホラーで終わって欲しくない。
こういうSF風なホラーやスリラーが好きな人には一度観て欲しい。いろんな人がどう感じるかを聴いてみたい。
日本のポスターがあまりにもスピーシーズなので、ちょっと感が否めない。
邦題も悪くはないけど、DVDのタイトルとかには「寄生体XXX」って付いてるのもあって、それは違うかなと、寄生ではないし。
映像もこの手にしては結構良かったかな。バイオハザードのVFXスタッフなのかな。
中身は薄いし、心理描写に重きおくならもっとしっかり描いて欲しかったりといろいろ残念感なとこは多いけど、個人的には好きな方な作品。
とりん

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