きよぼん

スキャンダルのきよぼんのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.8
「政治家は結果が全て。人格なんてどうでもいい」という意見もありますが、自分はそこまで割り切れないんですよ。

FOXテレビののCEO・ロジャー(ジョン・リスゴー)は仕事ができる男。ニュースショーでは、女性キャスターにスカートを短くて脚をみせろと指示。テレビは「視覚メディアである」と、視聴者の関心を見抜いて高視聴率。

更衣室?で女性キャスターたちが、矯正下着をつけたり、胸パッドを入れたりするシーンが印象的。ウソかホントかわかりませんが、理想ではなく世の中を動かす「現実」ってこんな感じなのでしょう。

ロジャーはその権力を使ってキャスターにセクハラ三昧。自分と関係を持った女性を起用して、断った相手を切るという方針。

このロジャーがセクハラでかっこ悪くやっつけられる映画であればスカッとするんですが、実態は複雑。

ロジャーは積極的に女性を起用してきた人でもある。グレッチェン(ニコール・キッドマン)が裁判を起こしたとき、反対派のなかに女性が多くいるなど、そう単純ではない。

つまりはロジャーがやってきたの内面の善悪はともかく、外面として「会社が回っちゃってる」わけなんです。うまくいってるシステムの中にいてる人からすれば、セクハラ裁判で彼を下ろそうとする人は外敵にすぎない。

ロジャーが女性に関係を迫るときにいう「忠誠心をみせてくれ」という言葉。これ裏の意味もありますが、表の言葉の意味もそのままで「忠誠を誓える人は、このシステムの中でいい思いさせてあげるよ」ということなのでしょう。

セクハラって個人間の出来事のようにみえて、実は権力闘争であるということがよくわかる映画。そりゃー簡単にいかないわなー。

仕事は結果が全てなのか?大多数の人が幸せになっても、そこで人間性を踏みにじられて泣く人がいるってのは居心地がいいもんではない。結果さえよければいい、なんていうのはやっぱりカッコ悪い、と思うのです。
きよぼん

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