馬井太郎

大菩薩峠の馬井太郎のレビュー・感想・評価

大菩薩峠(1960年製作の映画)
3.5
30年以上前のこと、原作全巻を取り寄せて、読み始めたことがある。3巻目くらいで見事挫折した。「である調」「でます調」がごっちゃになっていて、それがなんとも我慢できなくて、先読みを諦めた。全集は、屑屋に売ってしまった(後悔・陳謝)。
映画では、机・大河内伝次郎以外すべて観ている。片岡千恵蔵がはまり役だが、この雷蔵・机も「地」でいけた強みがあって、一見の価値があるように思う。
時代劇は、時代考証の忠実度も見どころのひとつである。作り話ではあっても、時代性をどれだけ取り入れているか、もちろん、荒探しではない鑑賞の眼は画面の隅々まで凝らすことになる。
ここでの私の眼は、夜の場面と、部屋の出入り・立ちふるまいに集中する。夜、特に室内が明るいと興が冷める。この時代のフィルム感度は今ほどに良くなかった。おまけにビジコンもなかったので、撮影には、相当な神経を使ったことと思う。

雷蔵の絶妙なリズムと中村玉緒の演技に拍手をおくる。山本富士子は、どんな場面でも、独特な一本調子セリフと能面で通すので、私の好み外に置かせてもらう。
それにしても、モノクロのせいもあるが、なんとも暗い映画である。