真っ黒こげ太郎

パンドラムの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

パンドラム(2009年製作の映画)
3.5
生存とは罪なのか?

いや、あいつら人食ってんだから無理でしょ!!!w




人口増加やそれによる水や食料を奪い合いの所為で地球が荒廃した近未来。
人類は新たなる星、タニスへ移住するために、6万人の人類を宇宙船エリジウムに乗せ旅立つ。

コールドスリープから目覚めたバウアー伍長とペイトン中尉だが、2人ともコールドスリープの副作用で記憶を失っており、断片的にしか思い出せない。
オマケに船は何故か停電状態で、引き継ぐハズのお隣の部隊からの応答もない。
バウアー伍長は船内を散策するが、船内では「ディセント」みたいな人喰いクリーチャーの群れがうろついていた!!!!

バウアー伍長は船内の人々を救うため、船の電力を復旧させようとするが…。



惑星移住船内で目覚めたクルーたちが、船内を巣食っていた恐ろしいクリーチャー軍団に襲われる、SF・サバイバル・ホラー。
「イベント・ホライゾン」のポール・W・S・アンダーソンさんが、制作を手掛けた宇宙船内を舞台にした血生臭いハード・SF・ホラー。

「イベント・ホライゾン」を鑑賞した際、似た様な作風だという今作を知った(制作も「イベント・ホライゾン」の人、監督は違う人だが。)。
俄然興味が湧いた事もあってレンタル。

今作は一言でいえば、宇宙船版の「ディセント」。
怪物の造形がそのまんまだったり、船内がやたら暗かったり、骨と汚物だらけの食い荒らし後があったり、怪物がやたら沢山居て群れで襲ってくる場面等、殆どそのまんま過ぎて笑った。w

ただ、あちらとは違いサバイバル展開に入るまでがやたら早く、初っ端から暗く狭い船内で記憶喪失で目覚め、船内散策を開始するや否や、速攻で怪物と遭遇し襲われる!!!
その後も頻繁にクリーチャーの襲撃を挟みながら謎に迫っていく。

目覚め→探索開始→怪物襲来→サバイバル展開と、やたらハイスピードで物語が展開。
何が起こったのか分からない主役達の背景も「記憶障害で、少しづつ記憶が戻る」という設定のお陰でそれなりに解消されている。

モンスターもかなり強く、武装した3人がかりでようやく一体殺せるという手ごわさ。
そんなのがウヨウヨいるからたまったもんじゃないですね。
「舞台の狭さや圧迫感」「先が見えない暗さ」「怪物の恐ろしい見せ方」等は「ディセント」に及ばないものの、四面楚歌の緊張感はそれなりに味わえる。


更に「イベント・ホライゾン」同様、船内の人が正気を失う心霊ホラー的な要素も含まれている。
本作では「パンドラム」症候群なる記憶喪失障害によってその狂気が描かれている。
(まぁ、そこまで深く掘り下げられてはいないが。)
クライマックスでは狂気に浸されたある男を介して船の真実が明らかになってゆく。
怪物の正体、船の居場所、何が起こったか…。
ここら辺のどんでん返しは中々驚きの展開で、楽しませてくれました。

後、個人的には格闘家俳優のカン・リーさんが「モンスター・ハンター」のトニー・ジャーさんを彷彿とさせる役で出てきたのが何か愉快でしたね。w
言葉通じなくて、仏頂面で怪物に挑む場面とか、もう完全に「モンハン」の時のジャーさんじゃねぇかと。
アクションシーンは後述する様にイマイチだったものの、モンスターと戦う姿は頑張ってました。


そんなこんなで基本的には「イベント・ホライゾン」同様に、様々なホラー映画のエッセンスを垣間見えて退屈せずに楽しめたんですが、全体的に忙しなさすぎるというか、サラっと仕上げすぎな気がするというか。

と言うのも、今作はかなりテンポが速く、よくよく考えればおかしな話も気にならずに見れたのですが、正直パニック描写~サバイバル展開までの流れが速すぎて「もう少しじっくり進めてくれてもいいのに」と思ってしまい、イマイチ入り込みにくかったです。

作中の雰囲気はかなり好みだったし、血生臭い雰囲気も好みだったんですが、その割に残酷描写を殆ど見せてくれないのはマイナス。
監督はドイツの人らしいが、とてもオラフ・イッテンバッハさんやアンドレアス・シュナースさんの国から来た人とは思えぬ程にスプラッターに対する想いが聞こえぬ、伝わらぬ。
槍で貫通させたり、怪物が人体を貪り喰ったり、喉を掻っ切る場面もあるっちゃあるが、どれも殆ど一瞬&サッパリな見せ方なのでスプラッター成分は物足りない。
まだグロシーンカットを惜しまれた「イベント・ホライゾン」の方がグロ方面をしっかり見せてくれていた気が…。

アクションシーンではカン・リーさんが怪物と戦う見せ場もしっかり用意されていたのは良かったんですが、余りにもブレまくりのチャカチャカしまくりな演出で処理されていて、見ずらい事この上なかった。

そんな感じで、自分がこの手の映画で重要視しているアクション描写やグロ描写等の見せ場が悉く薄味になってしまっていたのが残念。
雰囲気やオマージュ、後半のどんでん返しからの怒涛の伏線回収展開等、見るべき所はかなり多いので勿体なく思えた。



文句が多めの感想になってしまったが、何だかんだでこの手の映画が好きなら飽きさせない様な内容にはなっているし、見どころも割と沢山あるので、そんなに期待しなければそれなりに楽しめるのではないでしょうか。