MCUではなくSSU(Sony's Spider-Man Universe)の通算3作目。
そしてMCUとSSUも断絶しているわけではなく緩やかに繋がっているという極めてややこしい世界観に困惑するが、今作に至っては他の作品との連動性は希薄なので単独作として鑑賞することができる。
公開当時から結構酷評されていたので期待しないで観たところ、酷評される理由が分かるクオリティなものの、駄作というほどではない印象でした。ただし決して良くもないが。
ブロックバスターらしくリッチな映像演出は見応えがそこそこあるし、主演のジャレット・レトのシリアスな佇まいやマット・スミスの怪演も素晴らしい。
SSUの前作までの主人公はヴェノムで、このモービウスもヴェノムと同様にヴィランとして登場するキャラクターである。
なので世界観はダークでシリアス寄りであり(ヴェノムはかなりコメディ路線だが)、MCUとの差別化を図ることについては一定の成功を収めたシリーズとは言えるだろう。
ただし今作がヴィランモノとして面白いかと言えばそんなことはなく、極めて凡庸で“普通”のアメコミ映画に収まってしまっている。
プロットは何度擦られたか分からないほどにベタでお約束の連続だし、キャラクターの設定を生かせない生ぬるいバイオレンス描写にも萎える。
善悪二元論を超越した先にあるカタルシスこそがヴィランモノの醍醐味でり、それには容赦ない苛烈なアクションは欠して切り離せない要素である。
ヴェノムもそうだけど、レーティングの壁を越えられない以上、このユニバースはDCEUを超えることは不可能だ。
ダニエル・エスピノーサはクローズドサークルSFの傑作『ライフ』を生み出した監督であり、緊張感のあるホラー演出を得意としているのだろうが、今作でその手腕が生かされているとは言い難く、どうにも消化不良感が纏わりついている。
それに特殊能力の設定ゆえに今作ではスローモーションのVFXがとにかく乱発されるのだけど、そこに特撮としての面白さは全く無いのも問題だ。
モービウスという素材自体は調理次第で大化けする気配があるから、とにかく不自然で中途半端な出来栄えがなんとももったいない。
いっそ徹底的にホラー要素を高めてアクションシーンをごっそり削るとか、大きく転換をして再起することを期待したい。
…けどポストクレジットの上滑り感からして、望み薄かな…
同じコウモリでも『ザ・バットマン』の足元にも及ばない。