とりん

デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆のとりんのレビュー・感想・評価

4.1
2020年13本目(映画館5本目)

デジモンアドベンチャーのテレビシリーズが始まったのが1999年、映画、02、tri.シリーズを経て、そして20年間の歴史終止符を打つ最終作が公開された。
個人的には割と好きだったtri.シリーズの不評もあり、本作はそこまで期待されていなかったのではないだろうか。
それも踏まえてなのだろう、今作の異常なまでの無印オマージュの連発はファンなら誰しもが垂涎ものだろう。

まずオープニングからいきなり戦いから始まるのだが、その相手がパロットモンである。
街中で戦闘し、グレイモンと組み合うシーンもあり、これを観て気づく方も多いだろう、最初期作の無印映画の戦いだ。
それをオープニングでぶつけてくるあたり、憎い演出としか言えない。
もちろんあの時とは違い、各自デジヴァイスを持っており、自由に進化させることができる。
そのデジヴァイスも映画の中で細かくは語られなかったが、光士郎が開発した携帯によりデジヴァイスと携帯の機能、さらにはデジタルゲートも自由に開放できるという優れものである。

各々が成長し、大学、高校生、光士郎やミミは企業までしている。おそらくtri.から4年後くらいの時代設定である、つまり2009年ほど。
時代の発展から考えるとこれくらいのことが起きていても不思議ではない。その時代背景もしっかり組んでいるのが流石である。
太一とヤマトがお酒を飲むシーンなんて20年前では考えられなかった。

あらすじとしては世界中で意識不明者が続出する事件が発生、その全員が選ばれし子どもたちであった。
その原因が電子世界で生きるエオスモンが、意識をデジタル化していることであることとデジモンを調べている学者メノアとその助手井村から告げられ、戦うといった内容。

戦いの中で知らされる大人になったら一緒にはいれないということ。
これはこれまでも何度か議題として挙がっていた内容だと思う。
選ばれし子どもたちと言われるくらいだから、大人になれば会えなくなるというのは自ずと想定できるからだ。
さらに進化にはこの成長する力というものが深く関わっており、大人になるに連れてその力が失われていく、つまり進化をすれば別れが早くなるということである。
これを実際に局面することとなり、太一とヤマトはエオスモンを倒さなければいけないという使命とパートナーデジモンと一緒にいたいという気持ちとで葛藤することとなる。

最後の別れのシーンは、グッとくるし、予告にも使われているアグモンが太一の後ろ姿を見て、「太一、大っきくなったね」というセリフはもう涙なしには見られない。
というか後半からほぼグズグズの状態。

締め方もうまくまとまっていた。
tri.では全員の見せ場があったけど、今作は太一とヤマトが中心。
それに加勢するのも光子郎とタケルという、ここの構図もウォーゲームと同じ。
戦闘シーンなんかでも彷彿とするところが多数ある。
tri.は6作と時間があったので、今回のように単発だとやはり焦点を絞るのが正しい
それもしっかり心情描写が描かれているのが良い。
将来のことを悩みながら、どう進んでいくかを葛藤する姿が映し出されている。

無印の頃からそうだけど、デジモンという生き物との絆とそして彼らの成長を描いている。
無知だった子どもたちが成長していくのがテレビシリーズだったとしたら、映画は大人になっていく姿を見せてくれる。

tri.で散々見せた究極進化も今回一切なし。
正直02からの続編といっても違和感はないだろう。
でもしっかりとtri.のキャラクター、芽心とメイクーモンは出てくる。
それどころかこれまで出てきた選ばれし子どもたちのオールキャストが出てくる。
02テレビシリーズに出てくるアメリカのマイケルや、映画のみのウォレスまで。
もっと探せばいろんな発見があるはずだ。

そしてこの映画のすごいところはしっかりと02の最後に繋げているところ。
02では20年後の姿が描かれ、子どもたちがそれぞれ何をしているかというのを見せてくれた。
太一は最後悩んでいた研究テーマをデジモンとの共生とあげており、ヤマトは宇宙飛行士を目指す姿がある。
02の最後にあるシーンの1つだ。
もちろん他の子どもたちはすでにその一歩を序盤の近況報告で挙げられている。
この太一の共生といのも前作tri.があったからこそ、アグモンたちが平然と現実世界にいて活躍していることに違和感がないほど馴染んでいる。
記憶から忘れ去られるということはなく、これまで以上にデジモンと人間の共生が始まっていることが描かれている。
そして会いにいくからと宣言した2人、各々が研究や経験を積み重ね、10数年後には自分の子どもたちを連れてデジタルワールドへ行く、あの02のラストへと繋がるのだろう。
これがわかっただけでどれだけの感動とスッキリ、胸のモヤが晴れたことか。
02を振り返るか悩んでいたけど、振り返って良かった。
だからこその感動と集大成があった。

青春、自分と変わらない年頃に冒険劇を描いて夢中にさせてくれたデジモンアドベンチャー、そして20年経って大人になった姿を描いてくれた。
02、もしくはテイマーズ以来、デジモンを映画館で観たから、実に17,8年ぶりだと思う、なんかそれだけでグッときた。
必ずまた全てを振り返りたい。
とりん

とりん