小松屋たから

主戦場の小松屋たからのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
4.0
まずは、国内外、よくここまでの面々にインタビューができたな、と思った。きっと聞き手が「日系」アメリカ人、留学生ということが大きかったのだろう。媚びているような人もいれば、相手が仲間だと思い込んでいる人、上から目線の人、冷静な人、理知的な人、攻撃的な人、油断してしまった人……中にはガードが固い人もいたが、みんな、基本的には協力的な姿勢で語っている。それがこの作品の妙だ。

「都合よく切り取られた」「こういう使われ方とは知らなかった」「騙された」とあとから言っても、聞き手が盗撮、盗聴したわけでもなく、堂々と自分に向けられたカメラ、マイクに対して、あの表情で、あのような言葉を連ねたという事実は動かせない。

自らが表現・言論の自由に守られた「論客」を標榜する以上、インタビューを受諾したのなら、発言内容・表現には自己責任で最大限気を配り、あとは相手の編集に委ねるという覚悟をしなければならなかった。もしくは映像をチェックする権利を事前の同意書に盛り込むべきだっただろう(あったのかな?)。それは着地点が学術研究用でも、商業映画であっても同じことだ。

国家レベルで意見が分かれているのだから、何が史実に近いかは、観た人が、この映画以外の資料や意見も公平に調べながら、それぞれで判断するしかない。ただ、気づいたのは、どちら側の人にも言えることだが、話している内容に自信が無ければ、表情に明らかに歪みや曇り、戸惑いが生まれること。そして何より人間の品格は顔に出る。それはライティングや背景だけで創られるものでは決して無い。映像とは恐ろしいものだな、と改めて思わされた。

ちなみに、自分は日本人だ。そして、この作品は国籍が異なる大切な友人と一緒に観た。正直、勇気が必要だった。鑑賞後、すべての見解が一致したわけではないが、色々な話ができた。そして、この友人とはこれからもずっと良い関係でいられる、それは確信した。本当に観て良かった。

だからこんな知識不足の素人がこの映画のレビューなんて、という躊躇いもあったけれど、自分の人生のある一日の記憶を残す、という意味でも書いておいた。