東京キネマ

ミッション:8ミニッツの東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

こんな悲しい話はない。死が安寧にならないどころか、最後の審判を何度もテストされている感じ。というより免罪符がない。

ところで、いきなり話がすっ飛んでしまうが、「免罪符」という言葉を使うと歳がバレるので、正確に言えば「贖宥」だ。文部省が間違ってましたと謝罪もせず、ある日勝手に訳語を変えたので、同じ意味だということになっているらしいが、これは大間違い。キリスト教にはそもそも「免罪」という概念がない。「罪」は許されるものではないし、罪を認め(痛悔)、赦しの秘跡(告解)をして、そして煉獄で償いをすれば「贖宥」(つまり、多少罰を軽くしますよ、程度のことを)できるという話でしかない。なので、欧米のお話で良く「罪と罰」の話が出てくるが、救済できるのは「罰」であって「罪」ではない。ここを勘違いすると、お話が理解出来なくなるので、ご注意を。。。

話を戻す。で、そのまんま行けば絶望の話なんだけれども、ちゃんと最後に救済してくれる。それがいい。設定条件は二つ。脳は死後も一時的に活動を続けている。そして、死後、まるで防犯カメラのように脳の活動状態が8分間だけ保存されている。なので、この主人公、死んでいるのに仕事をさせられる。“戻るたびに記憶が進化する”ので、その8分間の爆破の記憶を何度も体験して爆破テロ犯人を特定しろ、と。まさに無限ループ。で、本来なら痛覚だって脳神経だから、皮膚を燃やし、肉片飛び散る痛みも記憶されている筈だと思うのだが、そこには一切触れていない。

まあ、それは良いとして、これは最後の審判を受けて天国か地獄かへ(必ず)行く、ということが否定された世界の話になるので、ハロウィンのかぼちゃのランタン(けちんぼジャック)の話に近い絶望の話になってくる。けちんぼジャックは、悪魔を騙してしまったために地獄にも行けず、冥界を彷徨うことになってしまうのだが、この映画の主人公のジェイク・ギレンホールは国のために働いて、立派に使命を果たした陸軍パイロットなのに彷徨っている。だから、本来、こんなことをジェイクにさせるってのは神をも恐れないトンデモ無い行為なのだ。で、結局、愛の世界(アナザーワールド)に旅立つのだが、それは別世界ということではなく、天国じゃないか、というのが後で分かる。つまり、最後の審判はあったのだ、と。

いやはや、うまい話を考えたもんだと唸ってしまった。余韻もVERY GOOD。素晴らしい。。。
東京キネマ

東京キネマ