マヒロ

ペイン・アンド・グローリーのマヒロのレビュー・感想・評価

3.0
身体の不調から制作意欲を失ってしまった映画監督のサルバドール(アントニオ・バンデラス)は、自身の過去作の再上映イベントをきっかけに過去を振り返っていく……というお話。

アルモドバル監督による『8 1/2』的な作品で、幼少期の出来事と映画制作に関する思いが交互に描かれていく。
監督の分身とも言える主人公を演じるのはアントニオ・バンデラスで、『デスペラード』辺りの脂ぎった男臭さとは全く違った枯れた渋い男になっていて、その変貌ぶりにびっくりした。この人『エクスペンダブルズ3』ではおしゃべりおじさんだったり、地味にどんな役でもしれっとこなしてしまってるのが凄い。

まず目を引くのが、オープニングクレジットの背景で蠢くマーブル模様の美しさで、本編でもカラフルな色遣いが目に楽しく、幼少期を過ごした川辺や洞窟の家の瑞々しい自然と対比するかのような、現在の家のカラフルなインテリアなど、こだわり抜かれた色彩設計が良かった。

家族や友人、恋愛や仕事に至るまで、人生の重要な出来事が記憶を思い返すかのように描かれていくが、一つの流れというよりは本当にポツポツと事実が出てくるだけのようで、もうちょっと幼少期と現在の出来事のリンクが見られたら良かったかなと思った。
『8 1/2』もしかり、同じく製作者の苦悩が主題の『アダプテーション』なんかを観た時も思ったが、こういう監督の私小説(?)的な映画は、監督本人のパーソナリティを深く知ってたらもっと面白かったかな、と感じることが多くて、個人的にアルモドバル監督についてはいくつか好きな作品がある……くらいの距離感だったので、そこまでハマりきれなかったかも。映画として好きな場面もあるんだけど、あくまで監督のために作られたもので自分のための映画だとは受け取れない感じ。

(2021.80)
マヒロ

マヒロ