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フェアウェルのRockoのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
3.0
Fan’s Voiceさんオンライン試写会にて鑑賞。
中国に生まれアメリカで育ったルル・ワン監督が、自身の体験にもとづいて脚本を書き上げた半自伝的な物語。

●あらすじ●
NYに暮らすビリーと家族は、ガンで余命3ヶ月と宣告された祖母ナイナイに最後に会うために中国へ帰郷する。傷つけないための良い嘘だと告知を拒む家族と大好きなおばあちゃんに真実を伝えるべきではないかと揺れるビリーが選んだのは・・・。

2019年1月のサンダンス映画祭で行われたワールドプレミアで称賛を浴び、数々の名立たる映像会社が争奪戦を繰り広げたが、監督が選んだのは「A24」!!勢い衰えず加速し続けている映画制作会社。
第77回ゴールデングローブ賞では、オークワフィナが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞!!(アジア人女性受賞は史上初)

ここまででもハードル上がり過ぎだというのに、
メディア戦略により「優しい<嘘>から生まれた感動の実話」「涙が止まらない」「大傑作」「余命わずかな祖母と親戚が過ごす日々を描いた人間ドラマ」

ちょっと落ち着きましょう。宣伝文句と違って仰々しい音楽や映像で飾り付けて過剰演出で泣かせに来るような作品ではなかったです。
「A24」の『ムーンライト』『レディ・バード』のように淡々と進む物語の中で静かに感情に訴えかけ共感を呼ぶような傾向の作品でした。
深く共感できた人には「自分にも経験がある。泣いた!傑作!!」共感できない人にとっては退屈なだけで全く響かないであろうと予想されるA24の手掛ける今作もガッツリ評価が分かれそうです笑

主演を演じたオークワフィナはアメリカで生まれ育った移民の複雑な感情や祖母の前で隠さなくてはいけない表情など自然体の演技がよかったです。
『オーシャンズ8』や『クレイジー・リッチ!』のように個性が光るキャラクターも面白かったですが、特別演技が上手い訳でもないのに作られた役だと感じさせないリアリティさがこの映画にとても合っていました。

この作品は中国の文化や死生観を紹介しながら癌の告知や移民のアイデンティティと孤独感という重くなりがちなテーマをコメディタッチでライトにしながら上手くバランスを取っているのは秀逸だと感じます。
主人公ビリーがアメリカで自立しようと頑張ってもなかなか上手く行かない姿とかナイナイばあちゃんの孫には優しくても陰口叩くキャラとか現実にいそうで身近「あるある」も随所に感じられました。

中国の派手な結婚式や美味しそうな中華料理など視覚的にも楽しめながら、ビリーがアメリカと中国、家族の意見と自分の主張に挟まれながら葛藤し成長して行く姿はシチュエーションは違えど自分の経験と重ねて自分の感受性が呼び覚まされるような温かい作品だと感じます。
マライア・キャリーのカヴァーで有名なBadfinger の『Without You』の中国語Ver.には笑いました。
感動作と謳いながら結構コメディです。
10/2公開!!!


●2020年158作目●


☆以下、ネタバレ含む鑑賞後向けレビュー☆
⚠️高評価の方スルー推奨




率直な感想として、好きじゃないタイプの映画です笑
淡々と進むのはいいのですが、何度かセリフに繰り返しがあったり、NYの街はスプレーの落書きの壁を映してアメリカらしさを映し出すのに中国はやたらと綺麗なところにも違和感を覚えます。

今をどう生きるかが大切だとか東洋と西洋の文化を比較して「個」を大事にしようみたいな今まで散々使われてきたメッセージを今さら聞いたところで何も響かなかったです。コメディとして見るには笑いが足りなかったかな。

自分も親を癌で亡くしてますし、従兄弟は日本の両親、アメリカで生まれ育ち日本語よりも英語の方が得意とビリーと同じ境遇で色々なことを見てきた分、深みがないように感じてしまいました。
重い作品もコメディも好きですが、描き方に芸術性も無く、心を掴まれるようなシーンも特にはなく…

中国の大家族に混じって日本人のアイコさんというキャラクターが出てくるのですが、場を取り繕うだけの愛想笑いを浮かべてお辞儀ばかりが馬鹿みたいに丁寧でキャラクター設定上の演出なのか日本人のステレオタイプとして描いたのか。後者だとしたら何十年前の日本女性なのかと腹が立つところ。

試写会後の監督のインタビューによると自分は想像でキャラクターを作り上げるようなことは一切したくないので、実際日本に住んでいる従兄弟のシャイなお嫁さんをモデルにしたとのこと。
確かに嫁いだ先で親戚の集まりなどで居場所がなく、こういうタイプの日本女性いるだろうなとは思いましたが、見ていてあまりいい気はしませんでした。
実際の女優さんはバイリンガルですが、「この役は正に私です」と言っていたそうな。謙遜するとこも日本人っぽいし、これが現実の日本女性だと他の国の方から自信満々で語られる嫌なエピソードでしたね。

作品が好みではなくても監督のインタビュー記事やトークを聞いて理解したり納得して評価を上げることはよくありますが、今回のインタビュー英語で聞いていても作品に込めた強い思いが特に伝わって来ず、通訳されても同じ。
やはり私には作品も監督も合わないのでしょう。『レディバード』と同じ匂いがします笑
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