カツマ

嵐の中でのカツマのレビュー・感想・評価

嵐の中で(2018年製作の映画)
4.2
稲妻に導かれ、運命は流転する。繋がるはずのない回線が繋がった時、期せずして人生の地図は書き換えられた。Netflixが新たに送り出すのは、『ロストボディ』『インビジブルゲスト』を撮ったオリオル・パウロによるタイムパラドックス系のサスペンスドラマ。あのサスペンスの名手がついに時空を越えるミステリーにまでそのテリトリーを拡張し、新たな代表作となりそうなクオリティを実現させた作品だ。

オリオル・パウロが監督、脚本を同時に担当している作品にハズレなし!と断言してしまいたいほど、サスペンスを撮らせたら彼の右に出る者もそうそういないだろう。過去作ではどんでん返しが何かと取りざたされてきたが、今作ではラブストーリーが大きな軸となっており、『バタフライエフェクト』あたりに共通する、そこはかとない切なさが全編を覆っている。時空を越えた壮大などんでん返し、そして鮮やかに回収される伏線の数々が、ラストには大粒の感動へと育まれていく。

〜あらすじ〜

嵐の夜。1989年、ベルリンの壁が崩壊した11月9日の出来事。少年ニコはブラウン管の前で、毎日のように自分のギター練習をビデオカメラで撮影するのが習慣だった。その日も彼はギター練習に明け暮れていたが、隣りの家から何やら争っているかのような物音が聞こえる。隣家を訪れてみると、何とフロアには女性の死体が。彼女を殺したと思しき男に見つかったニコは、逃げようとしたところを走ってきた車に跳ねられ死亡した。
25年後、2014年11月9日。かつてニコが住んでいた家で、看護師のヴェラは夫と娘と三人で幸せな家庭を築いていた。その日は25年前と同じく嵐の夜。ヴェラは家に眠っていた古いブラウン管から物音を聞きつける。稲妻が瞬いたその瞬間、何とブラウン管に25年前のニコの姿が映し出された。その直後にニコが車に撥ねられることを知っていたヴェラは、彼が死んだ過去を変えようとするのだが・・。

〜見どころと感想〜

伏線回収の魔術師オリオル・パウロが仕掛けた新たなるトリックは、主要なキャラクターが全て脚本の歯車として絡み合った壮大な時空サスペンス。ほんの細かな登場人物もしっかりと物語に絡んできて、しかもその一つ一つの行動がパラレルワールドと現実世界でリンクし合って、ラスト30分で一気に解き明かされていく大団円は正に圧巻。どこかに決定的な転換点があり、それが分かった時に、この物語の本当の切なさが顔を出す。

オリオル作品は3度目の鑑賞だが、彼は音楽の使い方も上手く、画面への没入感を引き上げる隠し技をいくつも持っているようだ。序盤のキャラクターのちょっとした行動が後半に活きてくるため、ブツ切りではなく一気にラストまで見てほしい作品。昨今のネトフリ映画の中でもかなりの『当たり作品』なので、より多くの人に鑑賞してもらいたい作品ですね。

〜あとがき〜

ふとネトフリを開いたら冒頭に『嵐の中で』という地味目なタイトルの作品が出てきたのですが、監督脚本がオリオル・パウロだったのですぐに再生!もうオリオルクオリティが120%炸裂した素晴らしい作品でしたね。ネトフリを観れる方にはぜひ観てほしいですし、サスペンス、ミステリが好きな方にはオススメしたい作品です。

オリオル・パウロはスペインの人で『ロストボディ』『インビジブルゲスト』といったサスペンスの名品を撮ってきたサスペンスの名手。もしこの『嵐の中で』が刺さるようならば、過去作品のクオリティの高さにもぜひとも触れてほしいと思いますね。
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