新潟の映画野郎らりほう

TENET テネットの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.4
【Reverse(Re:Birth)】


パースペクティブで捉えられる操作場。その軌道上を往来する順行列車と逆行列車。始点は逆行にとって終点であり、終点はまた順行の始点である。
その円環構造を顕す様に、円形劇場、回廊、洋上風車、帆掛け船の旋回、3針時計、回転扉といった円形/回転のモチーフが頻出する。フリーポートへの潜入を謀議するデビッドワシントンら三人の周囲を廻転するキャメラ。作品タイトルからして回文である。

その上で 起源を喪失した円環構造を立ち切る様に、ノーランは直線運動を徹底して提示する。
落下のアクションと、その “Reverse”逆行運動と為る上昇である。

着座椅子の転倒から風車塔への登攀。海への突き落としとサルベージ。飛込みと浮上。懸垂が下降と上昇から為る運動である事は最早論を俟つまい。
そして円形施設は崩落し、高速度牽引に依って上昇する ― 円環は直線に依って立ち切られるのだ。




“輪廻から涅槃への解脱” ― そのテマティスムな世界構築。
其を踏まえれば―、度々意識を喪失する主人公や、来世と余命への言及、遺棄され横臥した骸の Reverse に依る Re:Birth の暗示にも得心できよう。


冒頭劇場の集団卒倒場面では“閉眼”が既に“死”を黙示する ― 緻密に構築されたSF設定よりも、其れら
センシビリティ/観念性溢れる場面にこそ最も戦慄を覚えた。




《劇場観賞》