ゲイリーゲイリー

TENET テネットのゲイリーゲイリーのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「無知」を武器にして未来を変えようとする者。
「祖父殺しのパラドックス」を信奉し過去を変えようする者。

本作の監督であるクリストファー・ノーランといえば、リアルに拘る姿勢と緻密に練られた脚本が魅力の現代最高峰の映画監督だ。
そんな彼の新作である「TENET」は、彼が今まで手掛けてきた作品の様々な要素を取り入れた集大成ともいえるべき作品であろう。

本作の鍵となる時間の逆行は、「メメント」で見せた結末から始まる物語の構成を彷彿させる。
そして「ダンケルク」で我々を戦場へと誘った圧倒的な音響と映像美は本作でも健在だ。
時間の逆行が行われている事が分かりやすくするために酸素マスクを使うアイデアや、時間の順行は赤色を使い逆行には青色を使うという視覚的アプローチ等は「インセプション」で見せたコマやキックアウトなどの独特なアイデアを想起させる。
アッと息を飲ませた見事な伏線回収(冒頭から張り巡らされた緻密な伏線が最後の最後で明らかになるという構成)は「インターステラー」に匹敵する見事な脚本と言えるだろう。

そして複雑怪奇かつ独特な設定の中に織り込められたヒューマンドラマも本作の魅力の一つであろう。
そしてそのヒューマンドラマに欠かせない魅力的なキャラクターと演者の演技力。
(アーロン・テイラー・ジョンソンめちゃめちゃ男前)
個人的に最も応援したくなったキャラクターは、セイターの妻であるキャットだ。
夫の支配下に置かれている状況に諦めきった序盤から一転し、徐々に苦しみながらも抗おうとする彼女の強さや自由への渇望がとても素晴らしかった。
(船から飛び込むシーンに気づいた瞬間鳥肌が立った。)
彼女を見事に演じきったエリザベス・デビッキは初めて見る女優だったのだが、今後も注目していきたい。

緻密に計算された脚本と、独創性溢れる発想を見事に映像化してしまう手腕。
そして観賞後誰かと考察したくなる伏線及び展開の数々。(ニールはキャットの息子なのかなど)
単純な作品ではなくむしろ難解な部類に入るのだが、それでもエンターテインメントとして遜色は一切無い。
今までクリストファー・ノーラン作品を見た事がない人にこそ本作を是非鑑賞して欲しい。
出来ればIMAXで。
クリストファー・ノーランと同じ時代に生きていて良かった‥。