ベイビー

TENET テネットのベイビーのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.3
やっと観に行きました。

今まで皆さんのレビューを読むのを我慢して、なるべく知識を入れず作品に挑もうとしたのですが、薄っすらと聞こえてくる"難解だ"という噂。その噂どおり、初っ端からストーリーについて行くのがやっとなくらい難しい内容で、話の本筋から振り落とされないよう、必死で字幕を追いかけいました。

もうすっかりクリストファー・ノーラン監督の真骨頂となってしまった、"時間"を自由にいじくり回す荒唐無稽で斬新な演出。今回はある装置を軸に時間を反転させてしまい、メビウスの輪のように過去と未来を繋げています。

最初はその理屈が分からず、まるで科学雑誌「Newton」の読み聞かせをしているのか? と疑いたくなるくらい難しい内容でしたが、それでも必死で話に食らい付いた結果、クライマックスで得たカタルシスは格別なものがありました。

「スター・ウォーズ」ばりの三地点同時ミッションの緊迫感。全てをまとめ上げる伏線回収。この難解な物語から解き放たれた解放感。この結末を迎えてしまえば、あの小難しい前振りも、もう一度始めから逆行しながら追いかけたくなってしまいます。

そう考えると、この物語の未来を逆行させて過去に追いつくという内容と同様、脚本自体が結末から冒頭へと逆行できるように構成されています。また、冒頭と結末との端と端がクルリと繋ぎ合わさり、まるでこの物語が永遠に回り続ける輪っかのようです。

このメビウスの輪のようにねじ曲がった物語の構成は、ノーラン監督作品の「メメント」と共通しており、逆順は正順であり、過去は未来であり、結末は始まりとなり、その始まりは追い求めていた結末となります。

そんな物語を具現化する為に使われた、惜しみない労力と予算。CGを使わない主義で知られるノーラン監督の頭の中を現物で具現化するのって、一体どれくらいの予算が要るのでしょう。あのジャンボ機だけでも相当な金額が掛かりますよ。

今作の音楽監督はノーラン作品常連のハンス・ジマー氏でなく、ルドウィグ・ゴランソン氏というあまり聞き慣れない音楽家の方。正直、僕の中で少し耳障りな場面もありましたが、全体的に見れば今までのノーラン監督作品らしく、人の心理に響くような迫力ある音楽だったと思います。

そういった、お金の掛け方や音楽の効果や細かい演出箇所を再確認する為にも、もう一度観たい作品です。きっと結末を知った上で始めから観直しても、また違う見方が出来、二度三度と楽しめる作品だと思います。
ベイビー

ベイビー