ぐっさん

ひとよのぐっさんのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
4.2
2019/11/15ユナイテッドシネマ札幌にて鑑賞。
 
 原作は読んでいませんがさすが、白石監督流演出が光るといえる作品。
 面白かったし、泣けたシーンもあったけどもうちょっと内容を踏み込んでも良かったんじゃないかなぁと思えるシーンもあり後味悪く見えたけども、これが白石監督らしいやり方だとわかってもいるのでこれはこれでまぁいっかとも感じてしまいました。

 今回は、若手とベテラン俳優揃い踏み!演技力がすごいメンバー揃い踏みでしたねぇ(プラス白石作品常連組もいるよ。)
 佐藤健さんは事件が発生し地元に居づらくなり現在は東京でライターとして活躍している次男の雄二役ですがまぁ~あまり笑わずまさにライターとしていそうな風貌。家族のことを無視して腹正しいことをするけども・・・片隅ではちゃんと母親のことは忘れていない雄二の印象ピッタリの演技がすごかった。
 長男大樹役には鈴木亮平さん!「西郷どん」の時やあの洗剤のCM(てっぺキーーン!!)の明るいカッコいいイメージからガラッと変わって、気弱な存在。吃音のためコミュニケーションが苦手だけども、結婚もしているほどのしっかり者、でも・・・この役どころにピッタリとはまっていてさすがカメレオン役者といえる俳優さんでございますわ。
 長女園子役には今じゃバラエティー番組司会もなんでもできる松岡茉優さん!事件によってとある夢をあきらめ地元のスナックで働きなんとか生計を立てている長女ですが、母親思いが続いている演技がいいし相変わらず可愛い!

 でも、今回圧倒的に群を抜いていたのは、母親こはる役の田中裕子さん!さすがの一言しかない。田中さんの映画での演技では最近では高倉健さんとの共演で話題でした「あなたへ」を観た後だったので、その時とはガラッと変わって事件を起こして15年後に家族のところへ戻ってくる訳あり母親の演技を見てすごかったけども、日常にいそうなお母さん像が強かったし、台所のシーンとかでちょっと切なくなって泣いてしまったシーンもあったのでこれは本編でご確認あれ。
 私は、出所後家に帰ってきたときのこはると園子のシーンはあぁ~親子っていいなぁ~と思えるシーンなので好きでした。
 もっとすごかったのは15年前以前の母親役も田中さんが演じているのですが、子供思いの演技のシーンにはまたホロッとさせられたし、ちょっと笑えるシーンもあるので、ご注目していただきたい。

 他にもいろいろ言われても会社を守り続けるこはるの甥の丸井さんにはおなじみの音尾琢真さんもいいキャラだし、クセがすごいんじゃと言えて佐藤健さんのガチ友人であるあの人にとってはまさに出オチといえる演技は必見。
 しかも、全員人物キャラにはわけあり部分がいくつかあって、どうなっていくのかとのめり込めた展開は面白かった。

 子供に向けた家庭内暴力を続けていた父親を母親が殺すというマイナススタートから始まる1つの家族と周りの人たちの人間ドラマ。原作もいいですが、脚本が白石和彌監督と高橋泉さんの共同脚本。この2人はなんと「凶悪」も描いているので原作よりもさらにリアリティーの強いストーリー展開も良かったです。

 親は正しいことをしていると思っている。けど、残された子にとってはつらい15年間だった!
 その溝が埋まっていけるかどうか、観終わった後ちょっと語り合いたくもなる作品でもありました。
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