あすとろ

デッド・ドント・ダイのあすとろのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.7
The “Dead Don’t Die” 死なないのは死者だけか?

ジム・ジャームッシュ監督が作り上げた王道ながらも全く新しい味付けをされた作品!

ビルマーレイ、アダムドライバー、ティルダスウィントンなど豪華キャストを緩いコメディのゾンビワールドへ誘ったある意味贅沢な作品です笑
「デッドプールか!?」と思うような小ネタの乱れ撃ちでノックアウトされました…

ただ少し不満もあって、本編の内容に触れない程度でネタバレをすると「割と笑える内容」や「ゾンビから襲われるハラハラドキドキ感」などを期待していると少々消化不良というか肩透かしを食らうと思います。
予告編でもあるように高身長のマッシブなアダムドライバーが小ちゃい車から出てくるような“ズレ”の笑いや、キャストの出演作イジリなどまったりとした笑いが好きな方はハマると思います。

ストーリーの進み方としては“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド”に近く、ゆったりとした起が続いていきなり結が来る、みたいな感じです。
「世界観に浸れて楽しい!」という方と「ペースが遅くてダレている」という方の2パターンに大体は分かれると思います。

と少し否定的な感想を言ってしまいましたが、個人的には結構面白く、シンプルなコメディだけじゃなく実はメッセージ性が強いなと感じた作品でした!
ゾンビをメタファーとして扱い、観客に突きつけてくる感じなどは中々面白いなと思いました。

また製作陣はそこまで考えてないんでしょうけど、個人的にはこのご時世のこのタイミングで公開したのは実は意味あるんじゃないかと感じてコロナ禍で撮影中断や相次ぐ公開延期、映画館の営業自粛など映画界に大打撃で打ちのめされかけつつも、緊急事態宣言が解除され劇場の営業再開して1発目の大作としてこの“デッド・ドント・ダイ”が公開されたのは映画の底力というか「まだまだ映画は死なん!」というようなメッセージにも受け取れるな、って感じたりもしました。
まあ、絶対自分の深読みというか考え過ぎなんでしょうけど笑

利益遵守な商業映画(死んだような映画)が国内外問わず増えてる(死なない)中で監督の「俺はこれがやりたい!」というような貫いた遊び心で製作された映画がもっと増えてもいいと思うんですよね(否定的な表現を使ってますが、大衆向けな商業映画も好きです!)
だからこそマイノリティになってしまったタランティーノ的作品、所謂“亡くなってしまったように”思われてる映画も「死んでないぞ!」と鬨の声を上げたような、魂を叫んだような作品に感じました!

コロナ騒ぎでバタバタした直後だからこそ、映画館という空間でまったりとした空気感の本作を味わってみてはいかがでしょうか!
是非劇場でご覧あれ!
あすとろ

あすとろ