みや

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのみやのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

世界的ベストセラー小説の完結編を世界同時出版するために隔離された屋敷で9カ国9人の翻訳家が一斉に翻訳を行なうが、ネット上に作品の冒頭が流出してしまうサスペンス。

この設定がまず面白い。ダン・ブラウンの新作が発表される際、出版社が各国の翻訳家を実際に隔離して作業させたという逸話が基になっているらしく、あながち非現実的なシチュエーションではないから驚きだ。
ストーリーも面白かった。誰が、どうやって漏洩したのかというミステリでありながら、決してそれだけでは終わらない。実は翻訳者が著者だったり、全員が犯人と見せかけて違ったり、映像は地味なのにもかかわらず、二転三転でハラハラした。動機も最後の着地点も非常に良い。

作品に対する翻訳者それぞれの考え方が違うのは、お国柄なのか、あくまでも個人の見解か。解釈の違いを翻訳者たちはどうやって埋めたり、「我」の度合いを調整しているのか。なかなかスポットライトを浴びることのない翻訳家という職業を真っ向から描いているのも興味深かった。
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