Hiro

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのHiroのレビュー・感想・評価

4.0
“これじゃあ、まるで囚人だな。”

自分も囚われているかのような
息詰まる緊張感の中で”文学の力
を信じられるか”と自問自答する
105分。脳内お手軽”迷路”体験。

舞台はフランスの豪邸の地下に隠され
た密室。大ベストセラーのミステリー
小説の”翻訳”のために選ばれた9人は
情報漏洩を防ぐために外出もネットも
禁止される。しかし原稿の一部が流出
してしまう。原稿にアクセスできるの
は、作者と責任者だけ。疑われるのは
翻訳家達で、”犯人探し”が始まるが、
第2の流出が始まる。実行容疑者は皆
多国語を操る、一癖も二癖もある言葉
のプロフェッショナルばかりでこれは
“裏切り者探し”のフランス映画です。

文学作品の翻訳という題材がこんなに
も面白い仕上がりになるとは。知的な
謎解きと息をのむサスペンスを両立さ
せた極上の娯楽作。脚本、演出、役者
全てに脱帽。このような題材における
“様式美”すら感じさせる展開だった。

文学の魔力に翻弄される人々。この監督の
テクニックに翻弄される自分。たまに出逢う
こういう”予測不能な作品”が好きなんです。

精緻な脚本によって思いがけない結末に
導かれる予断を許さない展開と、予想の
“斜め上”を行く結末。身構えて見ていたが
気持ちよく騙された。それだけに最後に
得る自らが”誤訳”していた罪悪感が大きい。

p.s.
人気小説”ロバート・ラングドン”シリーズ。
その4作目”インフェルノ”出版時の驚くべき
ミッション。各国の翻訳家たちを秘密の地下室
に隔離して翻訳を行った、この前代未聞のエピ
ソードを元に”デジタル時代”ならではの仕掛け。
レジス・ロワンサル監督、お疲れ様でした。
Hiro

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