Hiro

WAVES/ウェイブスのHiroのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
4.5
"carpe diem, 今を楽しめ、
この瞬間を大事にしろ。”

一つの家族の日常のすべてが
崩壊した時に何が起こるか。
これは全ての若者が辿っていて
もおかしくない現実なのでは。

将来を嘱望されるレスリング選手の
兄、その影に隠れがちな優等生の妹。
息子に厳しすぎる父と、それを心配
する継母。“名曲が途切れなく流れて
くる”この作品はミュージカルのよう
だが青春の痛み、家族の崩壊と再生
を鮮烈に描いている。まるで、”魂が
振動する”かのような感覚に目覚める。

日常と非日常は”表裏一体”である
ということを、人間の持つ感情の
変化と”楽曲”でここまで表現する
映画を観たのは初めての経験で、
”押しては引き寄せられる”という
感覚はまさにこの作品のタイトル
そのもの。僕の”五感”は振動状態。

近年、注目を集めるスタジオ “A24”。
小洒落たカメラワークに兄と妹の二部
構成なんてエッジが利きすぎている。
なによりも、フランク・オーシャンや
レディオヘッド、洋楽好きには堪らない
これらの劇中歌たちは公開前の情報通り
全てのシーンで作中の人物と自分自身の
感情に全身全霊で”寄り添って”くれた。

自分を苦しめた人を”赦す”ことは本当
に難しい。でも、きっとその瞬間から
本物の人生が始まると思う。この世に
生を受けた意味がわかったような充実感。
何かに絶望して浮き上がろうと必死に
”もがいている”人にぜひ観て頂きたい。
自分に重なり劇場ではえずく程に泣いて
きた。つまり泣ける場所が出来ました。

p.s.
トレイ・エドワード・シュルツ監督。
有難うございます。きっとこのタイトル
には、“感情の波”という意味があり、
“人生の波”という意味もあるだろう。
彼らが“壊れたもの”を再生する姿は、
自分みたいな不器用な人間ほど心に刺さる。
Hiro

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