Hiro

MINAMATAーミナマターのHiroのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.0
“写真は撮られる者だけでなく撮る者
の魂すら奪う。だから本気で撮れ。”

たった一枚の写真が人の心を動かし、
公害問題として世界中に一石を投じた
水俣病事件。これは”環境汚染問題”に
光を当てた作品。国を超え、共に人類
“行く末”を考えよう。という魂を私は
なぜか”ジョニー・デップ”から受け取
った。コロナ時代の指針となる映画。

1971年のニューヨーク。アメリカを
代表する”写真家”の一人と称えられた
“ユージン・スミス”は酒に溺れ荒んだ
生活を送っていたが、熊本県水俣市に
あるチッソ工場が海に流す有害物質に
よって苦しむ人々を撮影してほしい、
と頼まれる。水俣病と共に生きる人々
にある提案をし、彼自身の人生と世界
を変える写真を撮る。いわばよくある
“白人が人々を救う”ヒーロー物語だ。

恐らくロケ地も日本ではないし、内容
やエキストラ含めてあまりにも日本へ
のリスペクトが雑すぎた。しかし我々
が決して忘れてはいけない歴史を愚直
なまで”まっすぐ”に撮影した姿勢に対
して、私は批評の言葉を口にする前に
生まれた国で起きたことを知らな過ぎ
た自分の”知識の幅”を再確認した。

水俣病は授業で知っていたが、水俣で
”何が起きた”のかまでは知らないまま。
この写真家のことは知っていたが、彼が
どれほどの”情熱”で水俣を撮ったのかは
知らないまま。初めて現在進行形の”真実
の輪郭”がおぼろげながら見えた気がした。

経済か、命か。人々と自然を犠牲にして
も利益を得る”資本主義”の暴力性に立ち
向かったのは、草の根の市民運動である。
公害史は資本主義の暗黒史だからこそ、
”社会は変わらない”と愚痴をこぼす前に
”Minamata”を学ぶ。映画には力があるから。

p.s.
きっと関心が持てないのは知識が
ないからで、それがあれば自らが
調べたり、深めたりすると考える。
いまだに終わっていない水俣問題、
世界中の公害や企業と癒着する暴力
との戦いを本来は日本側が作らねば
ならなかった。でもそれなら我々は
海外の彼らが作りにくい問題を相互
に作品化すればいい。きっとそれが
“インターナショナル”ってもんだ。
Hiro

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