Hiro

アナザーラウンドのHiroのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
“ほろ酔いは心地よいが
泥酔は切ないものだ。”

自分にもいい仲間がいる。みんなとの
友情があって”救われた”。自分ひとり
だけで人生を輝かすのはきっと難しい。
“お酒を飲むこと”を、これだけ前向きに
肯定してくれる作品にやっと出逢えた。

冴えない高校教師の主人公とその同僚
3人は、ノルウェー人哲学者の理論を
証明するため仕事中にある一定量の酒
を飲み”常に酔った状態を保つ”という
実験に取り組む。強い個として存在し
たくてお酒を飲むのに私たちは飲めば
飲むほど”薄れて”しまう。この作品は
人間の希薄さ、浅はかさ、そして儚さ
を味わう”酒飲みのバイブル”だろう。

本作で描かれているのは、自分の人生の
コントロールを一度失って”自由になる”
こと。これほど大真面目に人が”飲んだ
くれ”になっていく過程を描いた作品を
初めて見た。嬉しい時や、悲しい時や、
勝負の時はお酒が”側に”いてくれた。

この映画を観ることは自分にとってはある
意味で”実験”だった。それにより得られた
答えは、何かを試す時は試す者も”試され
る”ということ。次の場所に自分を連れて
行く事は得るものと失うものがあるという
“覚悟”だと思えた。この作品はそのことを
明るく教えてくれるのだ。”デンマーク”と
“トマス・ヴィンターベア監督”に、心から
の愛と敬意とを込めて、乾杯したいと思う。

p.s.
社会に呑まれ、人生に冷めかけた自分を
陽気に酔わせそっと包み込んでくれた。
映画館を出た後も、この”ほろ酔い”だけ
はまだ終わらない。そりゃそうだ、自分
の人生はエンターテイメントではなく、
”ドキュメンタリー”でしかないのだから.
Hiro

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