ーcoyolyー

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

3.9
オリガ・キュリレンコが完全にボンドガールの風格を纏ってそこにいるので古き佳き007の世界観から始まる。完全にそれを狙ったキャスティング。その冒頭の世界観は薄まりつつも静かに通奏低音として流れ、文学を愛する者による愛を賭した闘いが展開する。

「ページを開けば世界があふれ出す」「物語はすべてを圧倒して私たちの心で永遠に生き続ける」「文学の力を信じろ」「自分の物は自分で守れ」

この辺りの台詞、私の奥底に押し留めてある熱いものが刺激されました。

掴みどころがあるようでないような不思議な感覚だなと思ってたらこれ監督『タイピスト!』の人だったんですね。その情報を得た上で考えると更に分かるような分からないような混迷の度合いが増した。でも嫌いじゃないです。フランスだな、とも思う。フランスのこういうところは好き。

音楽も007風に、とリクエストされただろうものはそれっぽく作ってるんだけど全体的にRadioheadみが強くてなんだこれ?と気にしてきてクレジット見たら三宅純さんだった。成る程です。

『タイピスト!』の監督と三宅純が007風のものを作るとこうなる。それはまあ腑に落ちた感じはある。

文学を愛する者の守護聖人としてのプルースト、あれ良かったな。遅読にも程がある私ですのでまだまだ『金枝篇』の森から抜けられないんですが、『金枝篇』と『チボー家の人々』の森を抜けたらプルーストとスワン家の皆さんにまた会いに行くのでもう少しだけお待ちください。次の次です。縮訳版だけは読んでるの、それでこの世界好き!っていうのはわかってるから、だからそのままそこでもう少しだけ待っていて!
ーcoyolyー

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