なべ

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのなべのレビュー・感想・評価

4.8
なんという緻密な脚本。なんという映画的な編集。あまりに素晴らしくて上映終了後しばらく呆然としてしまった。

ナイブズ・アウトでミステリーのおもしろさを褒めたが、そんなものじゃない。作風が違うから比較しても意味はないんだけど、脚本のおもしろさでは圧倒的にこちらの方が上。急にナイブズ・アウトが色褪せてみえたもの。

スロースタートながら、見たことのない知的興奮にドーパミンが出まくり。知らない俳優たちによる多国籍な個性の描き分けも最高。その一方で、密室の閉塞感が息苦しいという、ベクトルの異なる特徴が混在してカオスにならないセンスのよさ!
フランス映画っぽい品のいい劇伴もステキだし(なんと三宅純!)、悪役となる版元のおっさん(ランベール・ウィルソン)のダンディさもすごくいい。安心して憎める鬼畜ぶりなのだが、なんともカッコいいのだ。出演者の中で一番洗練されているのだよ。

時間軸の前後演出、登場人物の主客転倒、ミスリードのミスリードと、手を替え品を替え翻弄される心地よさ。ああ、ネタバレなしで褒めるのが難しい。でも本作のネタバレはおもしろさを半減させる。
というわけで、余計な情報が耳に入る前に早く観に行って。これは観ないと絶対損するよ!

なんとなくだけど、T-34といい、サスペリアといい、多言語が出てくる映画って良作が多い印象。

※レンタルや配信など、ほどよいタイミングで追記します。
なべ

なべ