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甘いお酒でうがいのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

甘いお酒でうがい(2019年製作の映画)
3.5
秋に封切りされた際、この辺りではどういうわけか富谷のみの上映でタイミングが合わず観に行けなかったのですよね。それで先日、同監督による「私をくいとめて」を観た結果、本作を観たい気持ちがあらためて再燃してきたというわけです。だって、綿谷りさがああいう感じに仕上がるってことはですよ、シソンヌじろうはどうなっちゃうの?ってめちゃくちゃ気になる。ちょう観たい!

形よく切り揃えられた艶やかなショートボブの松雪泰子は、どこにでもいる平凡な中年女のおかしみと只者ではない手練れの艶かしさを併せ持つファンタジックな存在としてスクリーンのど真ん中に君臨し続けます。日記と称したモノローグは、ごくありふれた日常のあるあるネタを呟いたと思えば次の瞬間には生死の境目や哲学めいた壮大なテーマに及んだりしてまったくもって油断ならない。日常的に酒を嗜み、だいぶ遅めの初詣でも「美味しいお酒が飲めますように」と拝んでみせる彼女が時に、まるで何かの儀式みたいにゆっくりとグラッパを飲み干す姿が印象的でした。強いお酒を飲み下す時のあの、熱いかたまりが喉を滑り落ちていく感触をこれほど明確に具現化してもらえたのを観るのは初めてだ、とへんに嬉しくなってしまった。

時にはただのひとりごと、またある時は独白そして心の叫びのような言葉の数々はどれもシソンヌじろうによって生み出されたもの。コント師である彼は常に演者としての自分と観客から見える自分を意識しているわけで、そこに徹底した客観性とある種の毒っ気を感じ取らずにはいられません。その毒が「女性を演じる男性としての自分」に向けられているのか、はたまた「女性である松雪泰子が演じてもなおファンタジックな存在である川嶋佳子」なのか、あるいはその両方なのかと考え出したら頭がこんがらがってきました。穏やかで優しくて居心地がよくてこのままずっとここにいたい、だけどこれを何もかも全部そのまま真に受けたらきっと痛い目に遭う。そんな危機感を覚えた次第であります。
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