ペコリンゴ

カスリコのペコリンゴのレビュー・感想・評価

カスリコ(2018年製作の映画)
3.8
記録。
博徒、一世一代の矜持。

第26回新人シナリオコンクール準佳作、当時70歳であった國吉卓爾によるシナリオを殺陣師としても著名であった高瀨將嗣監督が映像化。

昭和40年代の高知県を舞台に、賭博に翻弄され地位も財産も失った男が、取り巻く裏社会の人間との交流と共に織りなす人生再スタートの物語を人情味豊かに描く。

“究極のギャンブル”、”博奕の華”、”賭博の終着駅”…。このように形容されるほどに、本作に登場する「手本引き」というのはギャンブルにおける傑作らしい。石橋保扮する主人公、吾一は妻子ある一流の料理人でありながらこれに魅せられて破滅。途方に暮れていた所を、宅麻伸扮するヤクザ荒木の口利きにより「カスリコ」(要するに賭場におけるパシリ)として再起を図る。

いやぁこれは鬼渋。超弩級に渋い。
全編モノクロ、オール高知ロケで役者のセリフも全て土佐弁。本作が描く時代には生まれてないし、高知には行ったことも無いけど、当時の高知の情景と言われて疑う余地が無い。そういう空気感で充満してる。

僕は一切ギャンブルはしないので賭博に魅せられ挑む人の気持ちは全く分からないが、本作が描く賭場の、和みのある大人の遊び場といった雰囲気や、あるいは緊張感ビンビンに張り詰めた迫力というのはとても新鮮。

そして、やはり良いなって思うのは人情味。人情が人を繋いで巡り巡る。こういう暖かさってのはジーンとくる。洋画にはなかなか出せない良さなんじゃないかなって思いました。