ハイスクール青春映画を観終えるたび「日本にプロムという文化が存在しなくて本当に良かった…!」と胸をなで下ろす側の40代女性ですが、これはよかった。とってもよかった。スクールカーストの頂点を極めし者たちのキラキラ群像劇とはわけが違うぜ、と言わんばかりの気概を随所にバリバリ感じました。
まず、主人公のふたりがめちゃ良い。高校生活のすべてを学業に捧げてきた真面目な生徒会長、なんていうとついガチガチの堅物を想像してしまいそうになるけれど、彼女たちはただお利口さんにしてきただけで恋にも性にも当たり前に興味深々のハイティーンなのですよね。己を律し、望む未来をキッチリ手にしてきただけあって自己肯定感も備えてて、気合を入れておめかししたら「ウチらイケてる〜!」ってノリノリに盛り上がれちゃう。ああ、なんて健全なんだ…とあまりの眩しさにクラクラしました。
で、そんな彼女たちは在学中、きっとクラスから浮いてたっつうか煙たがられてたんだろうけど、もう卒業だし細かいことは言いっこなしで!みたいな感じかどうかは知らんが全員なんの違和感も嫌悪感も示さずすんなりパーティーに迎え入れるんですよね。ここの対立を煽らない、というよりここに物語の主軸を置かない、むしろたどり着くまでのドタバタを真面目であるがゆえの冒険譚に仕立てるってとこがもうね、たまんなかったですよね。神出鬼没のぶっ飛んだジジ(レイア姫の娘だとは…!)の存在感よ。
「リチャード・ジュエル」でやり手の新聞記者に扮し、アトランタオリンピックに沸く街のほのぼのニュースに「こんなんじゃ勃たない」と言い放ったオリヴィア・ワイルドがこれほどまでにぶっとい女の友情ものを撮ったんだなあ…と思うとひたすらグッとくるものがあります。ハイになった後の虚脱感か、自信を失い卑屈になるモリーの頬を打って「わたしの親友を貶めるのは許さない」と凄んでみせるエイミーは尊かった。最高か。しんみりさせない終わりかたも、全編ドスドス低音が効いてる音楽もよかったです。あー、もう、元気でました。
「レディ・バード」に続き劇中でパーティーに繰り出したビーニー・フェルドスタインは、今後もシスターフッド映画で引く手数多になりそうな予感。顔芸の完成度が高すぎる。白いオーバーオールで牛乳顔面噴射してた鈴木福似のニコ・ヒラガと、くるくるの金髪がキュートなヴィクトリア・ルエスガはともにスケートボーダーなのね、ふむ。
校長もファイン先生もピザ屋のおじさんも、本作に出てくる数少ない大人たちはみな全員どこか間が抜けていて(エイミーの両親も)、大人なんてこんなもんでいいんだよ〜的メッセージを勝手に受け取り優しいな…なんてことを考えたりもしました。各々キッチリ伏線回収に絡んでくるのがまたよろしい。観終えたあとに登場人物全員が愛おしく思える映画はすてきだ。