新潟の映画野郎らりほう

罪の声の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
2.5
【潮流】


頻出する河川と橋梁。

道頓堀川上戎橋から臨む菓子メーカーの看板。自動車で渡る瀬戸大橋と その袂のロケーション。渡英した阿久津(小栗旬)は現地でも 河川及び橋梁を後景に選んでいる。
そして終局で娘を抱き締める曽根(星野源)が立つのは、細流(せせらぎ)の畔である。

大河揺蕩う小さき一葉、酷薄な時流、だろうか。
然し彼等はその激流を乗り越える(瀬戸大橋)。そして時流(流行と換言してもいい)を見つめ直す。缶コーヒーを手に 流れを凝視する彼等はその顕現でもある。


全てが終わり、曽根の心/人生は 漸く穏やかに流れ始める。



〈追記〉
60-70年代の潮流に対する批判意識も、川の流れとして黙示される。
今現在 主流とされる考え、将来的に主流であれとする考え、何れも30年以上後には当てにならない。時流(流行)に過ぎないから。
然し どんなに時が移り変わろうと、流行に左右されぬ“普遍”は必ずある筈だ。

最終局。そんな普遍を願い 非流行を推す曽根に対し、阿久津は時流を選択する…。
過去の時流を糾弾しておきながら 自らは時流に乗る。その無自覚な船の行き先は、果たして…。




《劇場観賞》