約50年前に行われた幻のコンサートフィルムが初めて劇場公開されるとあって、予告編からしてべらぼうにパワフルだったもんでそれはそれはもう楽しみにしてました。
主に歌を捧げる喜びが泉のように湧き上がってくる第一夜、演者もオーディエンスもバキバキに踊り倒してる第二夜、いずれもすごい。凄まじい熱量。脇を固めるミュージシャンは百戦錬磨の凄腕揃いだし、若き聖歌隊を率いる指揮者のアレキサンダー・ハミルトンはまるでダンスアクトのようにも見えるし、アレサのパパの堂々たる立ち居振る舞いと親バカスピーチはいかにもベシャリに長けてる感をバリバリ醸し出してるし、ふつうにそこらの兄ちゃんよろしくカメラに抜かれるミック&チャーリーがお肌ピカピカで初々しい。そして何より、歌の強さよ。信仰という究極の推しに歌を捧げる喜びとは、その高揚感とは、これほどまでに強く大きく途方もないエネルギーを放つものなのですね。とんでもなかったな。ふうう。
そんなこんなで観終えた直後の心拍数はきっと激しく高ぶっていた筈なのですが、次第に呆けてしまうというか虚脱感にやられるというか、何だか無性に寂しいようなしんどいような気持ちが押し寄せてきました。最初のうちはそれが何なのか見当もつきませんでしたが、この感情の正体はきっと「心許なさ」と呼ばれるものなんだろうと思います。あれほど盲信的におのれの全てを主に委ねる姿を目の当たりにしたためか、これといった信仰も持たずのほほんと人生をやり過ごしていることがひどく後ろめたいような気がしてしまった。歌詞の字幕、要らなくね?って思いました。