chiyo

霧のchiyoのレビュー・感想・評価

(1967年製作の映画)
3.5
2021/9/13
休暇を取り、故郷の霧津(ムジン)に帰ってきたキジュン。地方の閉塞感と都会への憧れ、ままならない人生への諦観が、キジュンの過去と現在、音楽教師・インスクとの出会いを通して描かれる。内容的にはメロドラマに近いけれど、感傷的というよりは刹那的。ひと時の情事を重ねながら、虚しさの舐め合いであることを二人ともが理解している。ただ、キジュンを慕う後輩がインスクに想いを寄せていたので、彼のことを考えると少し可哀相な気が。また、キジュンの旧友の結婚観に、当時の女性への軽視と選ぶ側の傲慢さが見られる。恐らくキジュンはもう霧津に帰ることはないだろうし、これからも諾々と妻と義父の言う通りに行動し、憂鬱で不毛な日々を送るのだと思う。60年代の韓国の疲れ果てた感が、何とも言えず重苦しい。
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