あなぐらむ

新宿泥棒日記のあなぐらむのレビュー・感想・評価

新宿泥棒日記(1969年製作の映画)
3.1
横山リエの蠱惑的な魅力に誘われる新宿アングラ文化巡り。彼女の佇まい、振る舞いを見るだけで、あまたある短所は相殺される。
パートカラーに見るピンク映画、性を映画にする事への中坊の様なあどけない憧憬を、成り立たないロジックで埋め尽くす90分。

田村孟、佐々木守、足立正生が共作する物語はジュネの本家を仰ぎ見ながら「泥棒(万引き)」という「違法」から、アングラ演劇を通過しながら「性の解放」(身勝手だけどね)の向こうにある「反権力闘争」へと矛先を移していくが、若松孝二のような風景映画としての趣は持ちえない。

撮影に仙元誠三が参加し、ドライブ感ある画を幾つも産み出して硬質な絵面を支えている。渡辺文雄、佐藤慶、戸浦六宏の大島組三羽烏が、メジャーでは見せないメタ的な芝居を見せ面白い。唐十郎、麿赤兒、大久保鷹、李麗仙と揃い、アングラオールスターになるのも大島渚らしい青臭さがある。
パリ、ベトナム、日本の時系列を入れる事で、遠くベトナム(反ベトナム戦争)とも連帯しようとするのだが、いかんせん字面から超えていくまでには至らないのが戦後インテリの残念な所。この辺りは足立正生の入れ知恵だろう。
金持ってる高等遊民の戯れにしかならないのは、今も続く悪しき伝統。
いい気なもんだぜ、という。これはウクライナ戦争を見ている今の俺達も同じ穴の狢だ。