タスマニア

はちどりのタスマニアのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
2020年207本目。

「はちどり」ってどういう意味だろう。
羽ばたかずにその場にとどまるために、羽を動かすあの鳥のことだろうか。
「とどまる」という感覚がウニの状況と重ね合わせそうだけど。
悲しいハチドリ。
でもハミングバードだぜ。ハミングバードって音がいいよね。

レイトショーで見れてよかった。
すごくウニという少女の表情の写し方や映像が丁寧で、彼女の周りにあるいくつもの要素それぞれを時間をかけて丁寧に描いていた気がする。
割と長めでボリュームある映画だけど、個人的には目が離せない時間だった。

何よりウニが愛おしい。
勿論、美少女的な「可愛い」も当てはめられると思うけど、それ以上に所作や行動の一つ一つが尊かった。
応援したい。助けてあげたい。そんな気持ちにさせる。
ウニが先生と出会った時に感じた妙な親近感以上に、先生はウニに対してシンパシーを感じて、母性?もしくは使命感が生まれたんだろうな。

ウニの表情は全体的に抜群だし、不条理におかれた少女としての危うさや妙な天真爛漫さがもうすごい。
ラストシーンの淡い映像の中身にウニを置く長めのカットなんかはもうすごく綺麗。

家族も親友も恋人も後輩もなんだか「知り合い」の域を出ない、「心が見えない」感じはすごく見に覚えがある笑
ふとしたときに出会ったなんでもない人に全てを話せたり、出会って数分しか経っていない人に妙なシンパシーや何十年も同じ険しい道を共に歩いてきた同志に見えるような感覚もすごくわかる。
ウニと先生のその関係性がとても救い。

実際の橋が落ちる事件と先生との別れを接続させたところはちょっと理由がわからなかったけど、物語の流れとテーマ的に先生との死別は必然だと思った。
「伯父さん」の死とは全然違う「死」に直面させる不条理さ。
「無事で何より」と言う父親と、呆然とした姉と、涙が溢れる兄と、ばつが悪そうなウニ。

文章化したけど、いろいろな形の不条理といろいろな形の人との関わりが一人の少女の周りに起きすぎて、全然感想は整理できていない笑

あと、本筋と関係ないけど姉の彼氏くんのキャラクターが好き笑
多分、描きたいものに対して、彼が蚊帳の外にいるからこその「優しい」キャラクターだった。
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