Fan's Voiceさんオンライン試写会にて。
グザヴィエ・ドラン最新作は『君の名前で僕を呼んで』に感銘を受け創出した愛の物語と監督本人が公言しているものの、たっぷりとドランの世界観で作り上げられた友情と恋の物語。
私もティモシー・シャラメのファンと公言しているため、今作を観るまでは作品を比較しようかと思っていましたが、鑑賞後はどちらの作品も個性が溢れ過ぎていて比較しても意味をなさないほどの素晴らしい作品でした。
初期作品3作再鑑賞後に観た最新作は昔に比べてかなり鮮烈さが薄まり、熟成された濃密なドランの世界観を堪能できます。強烈な衝突に疲労度を感じる自分にはこの作品のマイルドさがとてもよかった。
マティアス（マット）とマキシム（マックス）は男性同士ですが、ある日突然友情が恋愛感情に変わることは異性でも経験ある人が多いかと思います。友情関係を保ちたいけど恋心は止められない心の葛藤、切なくて苦しくて言葉で表せない感情を描き出すのが天才的にに上手い。
そして多様なカメラワークと自然光や照明を巧みに使って演出される怒りや距離感は昔の作品とは違って大袈裟ではなく自然にセンス良く作品に溶け込んでくる感覚で、初めてラブストーリーを描くに当たっていつもより演出を控えめにしたかったのかなという印象を受けました。
強烈な色彩映像が減ってはいるもののファンが期待するアーティスティックなショットは健在で、30歳になって撮るフィルムの大人びたセンスには驚愕。久々の俳優ドランと『mommy/マミー』の頃に遡ったような原点回帰な作風に乗せて描かれる色やキャラクター、階級、田舎と都会などのあらゆる対比や視線や構図、エピソードの入れ込み方、音楽の強弱のつけ方などはかなりグレードアップしており、映画を撮る度に進化して成長を見せつける才能に改めて惚れ込んでしまいます。
公開前で多くの感想は書けませんが、もう終わってしまうの！とエンドロール突入にショック。もっと長い時間観ていたかった。観終わった後に時間が増すと共にジワジワと余韻が広がり、何でオンライン試写会に当たってしまったんだろう、この作品は最初に劇場で観るべきだったのではと応募したのを後悔するほどに素敵な映画でした。
●2020年138作目●
以下、ネタバレ含むトリビアと感想（オンライン試写会後のアフタートークの解説情報もあり「AT」表記」
・冒頭の"ルカ"〜に捧ぐ
『君の名前で僕を呼んで』の監督名ルカ・グァダニーノでマティアスとマキシムの赤と青の服は↑映画のオマージュ。
・キスシーンの前と撮影で服の色が反対になる（AT)
・作品内の映画を「アルモバドルみたいでよかった」と言っていたのはスペインのペドロ・アルモドバル監督のこと。
『ボルベール＜帰郷＞』はこの映画と同じ松浦美奈さんが翻訳字幕を担当。多くの字幕を手掛けた作品の中で『ボルベール』は印象に残った映画10本のうちの1本だそうです。
・作品内で製作された映画は本当に製作されており、ファントムフィルムさんに送られて来た。（AT）←めちゃくちゃ見たい。
・ドラン絶対ドラゴンボール好きでしょ。
・タイトルのマティアスとマキシムは名前によって階級の違いがあり、マティアスが裕福な家庭の子供、マキシムは一般家庭でよくつけられる名前（AT)
・母親役は『マイマザー』『mommy/マミー』（『胸騒ぎの恋人』はニコラの母役）母親役アンヌ・ドルヴァル。外見のくたびれ度が激しい役柄で別人かと思いました。ATでも同じ感想でした。
・マカフィ（ケヴィン）役ハリス・ディキンソンは公開前『キングスマン/ファーストエージェント』のコンラッド役を務める注目イギリス俳優（AT）
💡『ブルックリンの片隅で』レビュー追加しました。今作この映画の影響大です。
・劇中ではほぼニックネームでタイトルのフルネームが出てこない。
・仲間でワイワイしてるシーンが多いがXドラン監督は子役で仕事をしていたこともあり、若い頃友達が少なかった。今になってこのような仲間（作品内は実生活の仲間）ができた。（AT）
・マックスが2年オーストラリアに行くまでに仲間内で集まる回数が多い。（AT）
←私も1年オーストラリアに行きましたが、つるんでいた仲間がいて出発前までは結構な頻度で遊んでいたので気持ちわかります。
・マットがアザ野郎と禁句を発して怒るシーンは自分がゲイだと気づくと怒りに変わるタイプがいるとの記事（ドラマ『13の理由』製作のモンゴメリー役についての監督インタビュー）を読んだことがあり、怒りの発端は元々の性格や生活からの苛つきだけではなくゲイのタイプを細かく描いたのでは？
↑ここATではエリートコースで婚約者もいる生活からのもどかしさみたいな話で想像されてました。
・結末は他のパターンも存在する。←めちゃくちゃ知りたい。
❤️おわり💙
