さうすぽー

シチリアーノ 裏切りの美学のさうすぽーのレビュー・感想・評価

2.0
自己満足点 38点

「裏切りの美学」という副題、そして予告編を観た感じからシチリアのマフィアを描いたゴッドファーザー的ストーリーを期待してしまったところ、まんまと裏切られました(T_T)

話の主人公は実在したシチリアンマフィアのボス的存在で、マフィアでありながら裁判を起こし、仲間のマフィア達を次々と牢獄送りにしたという実話を元にした話です。けどはっきり言って、実話を元にしたフィクションの本作よりもフィクションの多いゴッドファーザーの方が数倍面白いです!


一応フォローすると、実際のところ作品としての質は高いです。
キャスト陣の演技力はどのキャストも高く、特に主人公を演じた俳優さんは結構存在感があってサングラスを掛けた姿は石原裕次郎を彷彿とさせられました。

映像自体も綺麗ですね。
シチリアやブラジルの観光名所を綺麗に映していたりしています。

そして、序盤はゴッドファーザーやマーティン・スコセッシのギャング映画を思わせる緊張感のある銃撃戦もあって、後半にも一度だけ驚かされる場面もありました。

なので序盤を観た感じ、期待通りのマフィア映画になるのでは?と思って熱くましたが、残念ながらその熱下がってく一方でした...。


何がダメだったかと言うと、一番は裁判の場面ですね。
ヒリヒリした抗争劇が展開されるのかと思ったら、中盤から裁判の場面が非常に多くなります。
その裁判でマフィア達を次々と告発していくのですが、その裁判がすっっごく長いです!長すぎます!!
その裁判の場面が面白いのなら良いのですが、かなりダラダラと続いてテンポもかなり悪いので非常に退屈します。

その裁判所の人々の行動が最悪でした。
恐らく、実話なので当時のシチリアの裁判の様子を有りのまま映したのかも知れませんが、正直ミカンを切ってる下りやマフィア達がやたらうるさく騒ぐのを観てると事件の深刻さが半減してしまって緊張感が全然生まれないです。
実話だから仕方ない、という意見もあるかも知れませんが、何でもかんでも再現通りにやってしまうとシリアス味や面白味に欠けることもあるので良くないと思います。

あと嫌いだったのが、登場人物の描写の薄さです。
正直名前が覚えられない上に(名前が長いというのもある)、主人公以外の一人一人の人物を細かく描いてるわけではないので個々に思い入れも入らない上に感動もそんなに沸かないです。
これに関しては自分の事前の勉強不足もあるのは重々承知の上ですが、マーティン・スコセッシの実録ギャング映画は主人公のナレーションを取り入れて解りやすい説明をしてくれます。
その上で非常にテンポ良く進み、尚且つ興味深い登場人物を作らせてくれる内容にしてくれるので、観たあとにその人物のことをもっと良く調べたいという気持ちが沸いてきます。
この「シチリアーノ」にはそれが無いです。
堅苦しくシリアスな割には登場人物達を深く描いてくれないので、結構どうでも良かったです。

肝心な主人公もそんなに好きになれないです。
確かに俳優さんの演技は良かったのですが、ゴッドファーザーと比べてしまったせいか、そんなにカリスマ性が感じられなかったです。
弱音を見せた方が人間臭さは出るかも知れませんが、個人的にはマフィアのトップはマフィアらしく強くてカリスマ性のある人物の方が好きです。

また時折、主人公やその仲間が狙われるんじゃないかと匂わせるような音楽や緊張感を漂わせる場面もあったのですが、裏切りの場面はそんなに無いので結構肩透かしでした。


一応この映画、カンヌ国際映画祭にコンペディション部門に出品されたらしいので、恐らくヨーロッパやアメリカの批評家からは評価が高いかもしれないです。
ただ、自分みたいなあまり知らない一般人にはかなり難しい上にダラダラしてしまいます。

ちなみに、上映時間は2時間半とゴッドファーザーよりは短いのですが、体感時間はアイリッシュマン並みでした。
はい、相当長かったです(^_^;)


2020年映画ワースト10「第8位」