BK477

プライベート・ライアンのBK477のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
5.0
「匂いがあれば本物の戦場」
大戦を生き残った兵士に言わしめた逸話を持つD-dayのシーンが圧巻。

尚、日本ではタイトルのニュアンスが異なる。原題は「saving」の方が強調されているのがポスターやDVDのパッケージから見て取れる。
また日本では二等兵(private)という階級も無く、単語からのイメージがつきにくいところ。
ちなみに二等兵(private)は米軍における、一番下の階級である…

本作の主人公はミラー大尉であるが、私はアパムが二人目の主人公だと思う。 個人的には、アパムがどのように立ち回ろうと、結末はあまり変わらなかったように思う。

よく戦争映画ファンの中で議論になるのは「アパムが兵士として有能か無能か」「あのときこうしていれば」という部分だが、作品として注目すべきは彼の戦争に対する考え方である。 ここはけっこうサラッと流されるが協会の休憩時に「戦争はいい経験だ」と言っていて、(視聴者は、それまじで言ってる?と思うところ)なんとアパムは、戦争を肯定的に捉えようとしているのだ。 だから最初のほうで「戦場での友情の物語を書きたい」などと戯けた事を抜かしている。これは第一次大戦にも見られた、戦場を知らない若者の思想。

だが、そんなアパムも壮絶な体験を経て「戦争に綺麗事など無い」という現実を強く突きつけられる、このアパムが大人になる要素も重要な軸の一つ。

また本作が突出しているのは「人間の死」が濃く描写されている点だと思う。たった今まで生きていた人間の命が、いままさに眼の前で消える瞬間を疑似体験できる作品。何度見ても、あれらのシーンは見るのは苦痛であるが、生々しい死を疑似体験することで、より一層戦争への嫌悪が増す啓蒙的な映画だと思う。


短い人生の中で出会える、最も強烈な映画の一つとして★5を送る。


余談
これもよく議論になるところであるが、
最初と最後に出会うドイツ兵と、階段で出会うドイツ兵は別人である。
最初と最後にに出会うドイツ兵は、海外では「スチームボートウィリー」と呼称されており、階段の兵士は「Waffen-SS」と区別される。
ちゃんと見れば、軍服も役者の顔も違う。
(加えて、話すドイツ語の方言も異なるようである)

最後に「スチームボートウィリー」が登場した際に、階段のときと軍服が変わっているのも別人である証拠。

更に、階段ですれ違った兵士が「スチームボートウィリー」であれば、お互いに認識していないのは不自然で、映画の演出的にもおかしい。
あのシーンでは、お互いに初めてあった人間の反応である。

ただ、このような混乱を招かぬよう、役者の顔はもっとちがう別人にすべきだったはず。これはキャスティングミス。
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